第6章 おつかい (裏:三成、光秀)
「…湖様、ひとつお願いが…」
「なぁに?」
少し間が開き、三成から言われた願い
「傷を見せて下さい」
「え…?」
笑っていた湖の顔がそのまま固まる
「家康様に伺いましたが、家康様の申し出を断られ全部の傷の処置はされていないと…万一、湖様のお体に傷が残っては申し訳ない思いで…」
「えぇ…ちがっ三成くん、ちょっと待って。そんなに怪我してないからっ」
「では、その確認をさせてください」
大真面目に話す三成の顔は、いつも仕事をしている時と同じ顔だった
(これは…何を言っても引いてくれない時の顔だ…)
一方の湖はたじたじで、羽織を抱きしめ頬を染めている
「お願いします」
最後の一押しをされ、湖はしぶしぶ了承した
「…明かりを消してくれますか?」
「ですが、それでは見えません」
「じゃっじゃあ、無理ですっ」
真っ赤な顔をした湖にようやく何を気にしているのか気づき、三成はうっすら頬を染めた
「あ、すみません…そうですよね、では消します。ですが、見えませんので触診してもよろしいでしょうか」
「っ…うん…」
了承を取ると、傍の油明かりを吹いて消した
部屋は障子から通る月明かりのみで、湖の人影がうっすら見える程度だった
「よろしいですか?」
湖は、褥に立ち寝衣の腰ひもをとき寝衣を少し下げた
「…いいよ」
近づくと、暗闇で見えない分湖の香がその存在をはっきり示す
三成は、慎重にまずは家康から聞いた右肩の傷と痣部分を触る
びくりとする湖の反応に「ここですか?」と聞き、そこに顔を近づける
確かに、そこには少し浮かんだ線の傷と、湖の肌とは違う色の痣があるようだった
「み、三成くん、近いよっ…」
慌てて距離を取ろうとする湖の腰を片手で支え「許してください」そう言うと、次に背中の痣があるという部分を確認する
腕の中の湖を反転させ腰に手を回し、逃げないよう支えたうえで痣を探す
湖の着ていた寝衣は、身体を隠す役目が無いように肘下と腰までだらしなく落ち上半身は裸の状態だ
(っ意識しちゃ、ダメっ!三成くんは、心配してるだけっ)
そうは思うもドキドキした鼓動は隠すことができないくらい早くなる