第6章 おつかい (裏:三成、光秀)
■三成編
うとうとと、眠りに落ちようとしていたところに
外から遠慮がちな声がかかった
「湖様…起きていらっしゃいますか?」
(…みつ・・なりくん?)
ぼうっとする頭のまま、返事をし上半身を起こすと三成が部屋に入り襖を閉めた
「あ…すみません、寝ていらっしゃいましたか…では、明日に…」
「あ、ううん…大丈夫、ちょっとぼうっとしちゃって…」
欠伸を噛みしめつつ答えると、苦笑しつつ三成は「では、少しだけ」と言い傍に座った
「どうしたの?」
だんだん冴えてきた湖は三成を見ると、少し思いつめた表情をしているように見えた
「落馬されたと聞いて…」
「あ、家康が言ってた?うん。森でちょっと焦っちゃって」
苦笑いしてみせると、三成は更に申し訳なさそうに
「私が付けた尾行に驚かれたんですよね…すみません…」
そんな三成の手を取って湖は、首を振る
「三成くんは、私を心配してくれたんでしょ?謝らないで…勘違いして焦った私が悪いの。ありがとう、三成くん」
三成が何かを言おうとするのを、そっと制し続けた
「私ね…今回、一人で出ていいよって言われて舞い上がってたの。勝手に馬に乗って、森まで行ったのがそもそも悪いの…だから、落馬したのは絶対三成くんのせいじゃないの」
「湖様…」
三成は湖に握られた手を見つめ
「はい…わかりました」
と、いつもの笑みを浮かべた
「ふふっ、三成くんの笑顔…好きだな」
湖が目を細めて笑う
「湖様の笑顔が一番ですよ」
三成がそう返すと、きょとんとした顔で湖は三成を見つめた
「…湖様を見失ったと報告が入った際、一緒にいらした秀吉様とお館様はすぐさま探すようにと命じられました。お二人とも大変心配されていましたよ。もちろん、私も…ですが」
その報告が入った時、秀吉から光秀が一足先に探しに出たことを聞いたばかりだった
何かあれば、と付けた尾行の者からの続けざまの報告に、三成は顔色を変えた
心ノ臓が凍るような感覚は、戦でも稀に見ぬ感覚で一瞬思考が停止した
「いつの間にか、湖様は私たちに欠かせない存在になっていたのですよ」
そうなら嬉しいな…と、言い微笑む湖は本当に皆にも三成にもかけがえのない存在だった