第25章 桜の咲く頃 二幕(六歳)
湖はあの日からしっかり食事、休息を取りながら学習を続け、政宗が安土に戻る日まであっという間に過ぎていった
「じゃあな、湖…次回は、たっぷり良い物を持ってきてやるからな」
「まさむねのごはん、おいしかった!またきてね!」
「あぁ…それまで、達者にしていろ。…三成、任せたぞ」
「はい。ご安心を」
政宗に好きなように頭を撫でられている湖
「しかし…肉が付かないな…」
「ちょっとふとったよ。まさむねのごはん、おいしいもん」
「そっかぁ…?まぁ、飯が旨いのはいいことだな。これからもちゃんと食えよ、湖」
「うん」
その後方で見送りに来たくなかったが、偶然立ち会った兼続が
「また来るつもりでございますか…」
と、嫌そうな視線を送っている
「かねつぐっ!だめっ、どーして、まさむねにだけいじわるなの?」
「…湖様、これは意地悪ではありません」
「おー。湖、どんどん言ってやれ」
「まさむねもっだよ!」
武将二人を見上げぷりぷりと怒ってみせる幼子
だが、この二人本当に相性が合わないのか眉間の皺が外れないままなのだ
今、この場には白粉と湖に三成、それに言い合いをしている政宗が居た
すぐに他の皆も来るだろうが…
「もう…あ。そーだ」
くいくいっと手を招いて、二人に背を屈めるように動作する湖
「なんだ?」と想いながらも、素直に従ってしまう武将二人は湖の視線までその顔を下げた
下げたと同時に…
ちゅっ、
ちゅぅ、
とそれぞれの額に柔らかい物が押しつけられ、お互いの目が丸くなったのが見える
「こら、湖っ。また…」
少し遅れてきた信玄と謙信は、その現場をもろ見てしまい、信玄は「あーぁ」と声を出す
「…誰ですか?湖さんにあれを教えたのは…」
今日は佐助も調子が良いようで、城門まで足を運んできた