第25章 桜の咲く頃 二幕(六歳)
「よう、湖」
「あ。まさむね!あ…みつなりさまも!」
湖に微笑む三成と、片手を上げて答えた政宗
「これ、まさむねが作ったの?」
「そうだ」
きらきら目を輝かせる湖
「さて…揃ったな。食ってみてくれ」
そう言い政宗は、料理を皆に進めた
「食材は少ないが、調味料が旨いな。塩に味噌、
寒造里っていうのか…なかなかいい味だった」
目の前には多くの料理が並ぶ
煮物に刺身にあぶり物…信玄が感心したように声を出した
「宴のような食事だな」
「珍しいものが多くてな。色々やらせてもらった」
「…なんだこれは」
謙信がある皿を見ていえば
「あぁ、大根に梅干しを刻んで、シソとごまを振りかけたものだ」
摘まんだそれを食べる謙信
その様子をじっと見ていれば、謙信の瞳は明らかに…
「…旨い」
「だろ?あんた、梅干しが好きなようだったからな。こうやって食えば、つまみにもおかずにもなるだろ?」
同じものを何度もつまむ謙信に、湖は笑みを隠さずに
「ふふ。けんしんさま、うれしそう」
そう言って横を見れば、白粉もまた何か旨いものを見つけたようでそれを皿にもってたべていた
(あれ…?かかさまも、ごはんにむちゅう?)
見ればそれは、あぶり魚をほぐした料理のようで…
「あぁ、猫はやっぱりそれか」
と、政宗は白粉を見て笑う
「…まさむねは、すごいね…」
「ん?どうした?」
「なんだか…まさむねのおりょうりは、まほうのようね?」
「まほう?なんだ、それは?」
湖から出た言葉、それに佐助も驚く
「魔法」そんな言葉は、ここには今ないからだ
(現世の言葉…どういうことだ…)
「ん?「まほう」?ってなぁに?」
「お前が言ったんだろう」
「湖、なんか言った?まさむねっ、湖は?湖の好きなのどれ?」
無意識に出た言葉だったのか、湖は自分の言った言葉を覚えていない様子だ
そして、政宗もまた気にした様子もなく「あぁ、お前は…」と料理を勧めている
(…無意識か…?)
「にーさま、これっおいしいよ!」