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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


取り出し抱えた鈴は、ゴロゴロと喉を鳴らし信玄の指にすり寄る

「…そうか…じゃあ、白粉の所に行くか?」

湖から鈴になれば、決まって白粉は姿を猫に変えて猫の母親として色々教えているようだった
だからこの日も当然のように信玄は、白粉の元へ鈴を連れて行こうとした
自分の上にかかった童の赤い着物を片手に持つと、反対の手を畳に付き身を起こす
至って普通の動作だが、信玄はそれに違和感を感じた

(なんだ…)

身体が軽い
昨夜からすこし重くなってきてた身体
だが今は…

(少し前から調子が変っている…調子が悪くなるだろう前兆があっても動かなくなるような不調にはならない…助かるが…)

鈴と目が合えば、鈴は「なんっ」ともっと撫でてとすり寄る

「お前が「おまじない」でもしてくれてるのか」
(まさかな)

ははっと笑う信玄
鈴は機嫌良さそうに「にゃぁ」と鳴いていた




(よかった…ととさま、元気になった)

本当に眠くて寝てしまった湖
だが、うっすら目を開けば目の前にあったのは、薄黒い靄だった
信玄に見つからないように解らないように…
鈴に姿を変え、その靄の部分…胸に口づけを落とす
起き上がった信玄のその部分は、先ほどより色が薄くなり、灰色の靄に変っていた

(一回…あと二回…こんどに桜さまにあうまでに、あと二回…だけ…)




鈴を抱えて歩き出した信玄だったが、白粉の元へ運ぶ前に寝てしまった子猫に苦笑した

「おいおい、お前も寝るのか?」

念のために、子猫を持っていた着物で包む信玄
すると目の前から知っている気配が近づいてくるのに気づく

「…少し付き合え」
「謙信…お前がわざわざ来るなんて珍しいな」

信玄の部屋までの廊下だ
謙信が、わざわざ此処に来たのだから行き先は自分の部屋だったのだろう
謙信はちらりと信玄の手元にある赤い着物を見る

(鈴か…)

子猫が包まれているのが解り、大方湖が昼寝をしてしまったのだろうと予測する
それには何も触れず翻し歩き出す謙信についていく信玄

(…鈴を預けにいきたいが…まぁ少しなら問題ないだろう)
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