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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


信玄はそんな政宗の様子を見て、自分の後ろにしがみつく湖に言うのだ

「湖、安心しろ。この男に睨むなと言い聞かせた。もう大丈夫だぞ」
「…こわいかお…してない?」
「あぁ。大丈夫だ、見てみろ」

ちらりと信玄の横から見えた湖の顔
不安そうに眉を下げて、政宗の顔をのぞき見るのだ
政宗は、極力努めて柔らかい笑みを浮かべる

「…うそつきのわらい顔みたい…」

ぽそっと湖が言った

「っぶ…くく…なるほど。湖には作り笑いに見えるか」
「だって…ここ。んってなってるもん…」

湖が指さすのは自分の眉間だ
確かに政宗の眉間には少し力が加わっているようにも見える

「…湖、名前を呼んでみろ」

政宗は湖と目線を合わせるようにその場に片膝をついた

「なまえ?お兄ちゃんの?」
「そうだ。政宗だ」
「まさむね、さま?」
「政宗」
「まさむねさま」

首を振った政宗に、湖は首を傾げ見る

「様は、要らない」
「…まさむね…にーさま?」
「悪いが、俺はお前の兄になるつもりはない。政宗でいい」
「まさむね?」
「そうだ」

「お兄ちゃんなのに、へんなの」っといいながら、うっすら笑みを浮かべた湖に政宗はやっと息をついた

「湖」
「なあに?まさむね」

政宗の口角が上がる
その片方の瞳に湖がしっかりと映っている
フッと片方だけ口角が高く上がる凜々しい笑み

湖は、先ほどまでの恐怖感も忘れそれに見入ってしまった

「…まさむねのえがおは、かっこいいね」
「湖?」

様子を伺っていた信玄が、湖の目の前で手を振った

「ね、ととさま。まさむねのえがお、きらきらだね」
「そっかぁ…湖にはそう見えるんだな。だ、そうだ。独眼竜、ようやく今の湖を見たな」

(今の湖…)

確かにそうだと政宗は気づく
消えた湖を探して、この小さな幼子を見たとき
幼子を通じて見ていたのは、常に大人の湖
童を受け入れては居なかった
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