第6章 おつかい (裏:三成、光秀)
「湖、入るよ」
信長が出て行って、さほどもたたない内に家康が外から声をかけ襖を開けた
「…あんた、変な顔してどうしたの…」
そのまま褥まで近づき、その脇に座ると「傷…見せて」と言った
「家康…信長さま…なにかあったの?なんか…機嫌が悪いみたいだったけど…」
家康から、はぁーと溜息が聞こえる
(湖のことになると、みんなが…まぁ、俺も人のことは言えないけど…)
「特に問題ないから…手当するから、さっさと見せて」
恥ずかしがる湖の寝衣を下げると、前に蚯蚓腫れのような傷が肩から鎖骨まで付き、青痣が二か所
背は、腕の付けねと背中中央に二か所
顔をしかめながら
「こんなんで、よく「何もされてない」なんて言ったね…」
そう言いながら湖を仰向きで寝かせ、桶に手拭いを浸し肩の二か所の痣部分を冷やした
「こっちの痣の方がひどいから、しばらく冷やして…傷はこの薬を一日2回は塗って…」
塗り薬の蓋をあけ、傷に薬を這わす
ぴくっと湖が反応を見せるが、それに気づかないふりをし薬を塗り続ける
「どうして…こんな傷ができたのか、教えて…」
「え…う、うん…謙信さまに「猫に化けろ」って言われて「できない」って答えたら、急に…着物をはぎ取られて…たぶん、その時に擦ったんだと思う…」
後半は、小声で聞き取れるのがようやく位で話す湖の声に耳を傾けながら塗り薬の上に薄い布を当てる
「背中は、押し倒されてたって聞いたけど…その時?」
「背中にもあるの?うん…たぶん…あ、でもその前に落馬したから、そのせいかも…」
ぴたりと、処置していた家康の手が止まる
「落馬?」
「えっと。森で…ちょっと焦っちゃって…」
苦笑する湖に、家康の眉間のしわがますます寄る
「湖、脱いで見せて」
「え??い、いや・・ですっ!」
「落馬したんでしょ?他に痣や打撲があれば…」
掛けてあった羽織を取って、着物に手をかけようとする家康の手をのけつつ
「だっ大丈夫!!鈴になってたから、どこも打ってない!!」
羽織を抱えると、家康を見上げた
「…わかった…でも、何か気づいたら必ず教えてよ」
家康は持ってきた薬と水の入った桶を近くに置くと、湖の額に手を置き「また来る」そう言い出て行った