第6章 おつかい (裏:三成、光秀)
「湖様が落ち着かれたようですし、一先ず城へ戻りましょう」
三成は「失礼します」と声をかけ、湖を横抱きにすると戸口へと歩き出した
湖は恐縮しながらも、疲れもあってそのまま大人しくしていた
その後を秀吉と光秀が続く
秀吉がため息をこぼしたのに気づき、身を固くする
それに気づいたように三成が
「湖様が居なくなったと報告を受け、みんな心配していたんですよ。安堵のため息ですよ」
そう微笑み声をかけた
城に着くと、湖は部屋で寝かされ武将たちは全員集合を受け軍議となった
城までの道、気になっていた馬の事を聞くと三成は申し訳なさそうに
尾行の事、馬はその人が連れ戻ったことを話して聞かせた
(たぶん、私がはじめに気づいたのは三成くんの…)
ごろんと、寝返りを打つと右肩が痛む
「っ…」
顔をしかめて上半身を起こすと、右肩から寢衣を下ろし見てみると、筋傷の他に青あざが見えるだけで2ヶ所
「やっぱり…」
(着物引っ張られた時かな…押し倒されて時かな…)
スッと指で擦ろうとすると同時に襖が開いた
「…湖」
「の、信長さま…っ!」
下ろしていた寢衣を慌てて戻すも、脇に座った信長にすぐに下ろされてしまった
「っや…」
「…案ずるな、何もしない」
下した寝衣から出る肩に手を掛け眺める信長を、湖は緊張の面持ちで見つめる
「あやつ…女の扱いを知らぬのか…」
(この肌に跡が残るようなら、どうしてくれようか…)
冷たい眼差しで、その怪我を見「他は」と手を差し出した
湖は、左手を差し出すとその手に乗せ「あとは…これだけです」と、手首の赤い跡を見せた
「…ふん…力任せに握られたか…」
つーっと、赤い跡を撫でると指を絡めその手首を信長の口元へと移動する
「っ・・の、信長さま…」
ぺろん…
信長は赤い跡をなぞる様に舐めとった
「ひゃぁあっ」
変な声が上がってしまい、湖は反対の手で口を押えた
しかし、信長は何もなかったようにその手を下し
「後程、家康に薬を持たせる。さっさと治せ…」
そう言い部屋から出て行った
「え。ええぇ…??」
残された湖は下された寝衣もそのまま困惑し頬を染めるのだった