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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


「何故故、貴殿が居られる」
「居ちゃ悪いか?使者で来てんだ」

春日山城の一室
宴の翌日、早朝から安土より使者が来た

しかも、兼続と犬猿の仲である伊達政宗だ

暖かな心地よい風が吹く外
対象にこの部屋は冷え切った空気だ

「申し訳ありません。直江殿、早々に参上させていただくことになり…」
「石田殿…ご用は何で御座いましょうか」
「はい。同盟を受け入れていただいたにあたりまして…前もって用意していた品を参上に上がりました」

そこには、安土の流通で手に入ったのであろう
異国品、絹、酒が積まれていた

「…これは、用意周到でございまするな」
「ええ。万全を期し用意したもの。お納めください」

「湖は何処だ」

ぴしっ…

「湖様はただいまお出かけで御座いますれば、日を改めて参上ください」

政宗には一切顔を向けず、三成を見たまま答える兼続

「お前、一体なんでそんなに俺を嫌う…」
「嫌う?さて。なんのことでございましょうか?」
「…ったく…だから頭の固い奴は…」
「解放し過ぎて羽目を外すより、某は自分に恥じぬ頭の固さを評価します」
「「……」」


「直江殿、本日は直江殿にはこちらをお持ちしております」

三成は、政宗と兼続の冷たい空気をよそに自分の懐から包んだ書籍を取り出した
はらりと当て布が取られれば、兼続の目が見開く

「これは…」
「こちらは偶然手に入った書物ですが、私はすでに書き写しましたので、よろしければ直江様にとお持ちしました」

にこりと微笑む三成の手から、書物を受け取ると兼続はなんとも言えない表情を見せる

「唐代の医学書では、ありませぬか…珍しい…」
「ええ。学ぶことが多くあります」
「さすがは、石田殿。これは頭の肥やしになりまする」
「気に入っていただけて何よりです」

政宗と兼続が合わない反面、考え方の平仄が揃っている三成と兼続は意気投合するのだ

「なるほど…こちらは、本当に興味深い…すばらしく興味深い書物…しばしの間、お借りできますでしょうか?」
「もちろんです。ですが…私どもに十日ほど城に滞在させていただくことが可能であれば、そちらは差し上げたいと考えております」
「ぬ…なんと…」

兼続の手元にある書物
それは、まだ一度も見たことの無いものだった
同い年のこの二人、政宗の事を忘れ詩歌や古文書の学識を語り合い始めた
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