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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


登竜桜と過ごした翌日には春日山城に戻った謙信達
湖の成長に城内の者は「本当なのだな…」「夢のようだ…」など様々であったが、それよりも響めいたのは、安土との一時同盟についてだ

兼続が食いつくように先ほどから訴える

「湖様を返せっと、そう申し出があったのですか?!なりませぬっ!絶対に、なりませぬっ!」
「おいおい、兼続…湖が驚いてるぞ」

湖は、兼続の大声に驚き信玄の後ろにすっかり隠れてしまっていた

「っ、しかし…っ事態が…」

だが、兼続を落ち着かせるような声が聞こえる
湖だ
信玄の後ろに隠れたまま小さく言った言葉は、兼続の大きな耳にしっかり届いた

「…湖、ここが好きだもん…他のとこはやだ…」
「湖様…っ」

「少し落ち着け。同盟は一時的なものだ…今、戦を起こされても色々面倒だろう?」

信玄が笑いながら兼続にそう言えば…

「…確かに…今は、湖様の安全を考えるならば…同盟は確かに…」

ぶつぶつと、だがこれで少しは落ち着きそうな様子の兼続に謙信は息を吐いた

「湖…来い」
「うん」

とことこと、あるく童は以前の三歳児とは違う
まるみの帯びた体から、細く頼りない手足に長い髪、確実に少女へと姿を変えていた
側まで来ると、湖は立ったまま謙信に「なあに?」と少し身をかがめて尋ねた
背中を隠す髪の毛が、さらりと落ちる
その一部を指でつまむと、謙信は湖に

「…髪は、このままでいいのか?」
「あ。そうだ。ととさまと…けんしんさまは、ながいかみのほうがいい?」

疑問に疑問で返された謙信は一瞬言葉に詰まった

「なんだ?湖、俺たちの好みを聞いてるのか?」

信玄が湖を見ながらそう言えば、湖は「うん」とにこにこと頷くのだ

「だって、湖。ととさま、すきだもん。あ、けんしんさまも」
「…それと、髪の長さがどう関係あるんだ?」

まじまじと問う謙信に、信玄が笑いながら返す

「そりゃ、好きな男に可愛く見られたい女心だよなー?湖」
「おんなごころ?」
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