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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


「大丈夫ですよ。湖様…私たちは、貴方様を攫いにきたわけではありません。湖様は…安心して信玄様の元でお過ごしください」

幸村の着物を掴んでいた手が少し緩まった
それに気づいた幸村はゆっくり後ろにいる湖の方に振り返り尋ねる

「大丈夫か…?」

こくんと、首が縦に振られるのを見て幸村はその体を抱き上げた

一連の様子に政宗や秀吉、家康は眉をしかめて見ているしか無い

湖は、先ほどの声の主を見る
目が合えば、少し寂しそうな笑いを浮かべた三成は湖に繰り返し言った

「‥友達ですから、こちらから湖様にお会いしに参ります。その際には、どうぞ遊んでくださいませ」
「…うん、いいよ」

そんな会話を聞いていた謙信が肩眉を上げた

「どういう意味だ」

そう信長に問えば、代わりに光秀がこう言うのだ

「同盟、感謝の印に幼姫の教育係をそちらに派遣しよう」
「なんだと…」

信玄が光秀を見ると彼は飄々とした笑みを浮かべて続けて言った

「安いものだと思うが…こんな情報を無かったことのように一切記憶せず、口外せずに居るんだ」
「…脅すつもりか。それらは、同盟の条件に組まれてたもので、そんな話は聞いていない」

ぴりぴりとした場の空気に、酒を飲んで口を挟まずにいた登竜桜が声を上げた

『…いいではないか』
「おかか様…?」

登竜桜は続ける

『湖の事を考えれば、越後と安土。両方の知り合いが側に居た方が、元に戻った際の選択もしやすかろう。この娘の事だ。記憶が戻れば、どうすればいいのか散々迷うだろうが…どうせ同盟を組むなら、湖に会いたい者の自由くらい許してやればいい』

『ただし…』

声色が変れば、今までほんのりと柔らかい世界に居たはずの場所が、禍々しい気配に包まれた
武将達は無意識に腰元の刀に手が伸びた

『この地と儂を侵害するつもりならば、湖の知り合いとは言え容赦はせん…跡形もなく食らってやろう…』
「おかか様っ」

パンっと白粉が自分の手を打った

「…湖が怖がります」
『…そぅだなぁ。悪い悪い、くくっ…』
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