第25章 桜の咲く頃 二幕(六歳)
「そっかー、そっかー」と謙信の膝から立ち上がった湖は、パタパタと三成の前に来ると…
「じゃあ、みつなりさまと、湖もおともだちねー」
と、その首に手を回すとぎゅうと抱きしめるのだ
「っ…、湖…さま・・」
驚いたのは三成だ
突然の童の行動に身動き一つ出来ずにいる
「あのこんぺいとう!とっても きれいで、おいしかったの。ありがとー」
「湖っ、こっちに来い」
振り向けば、幸村が怖い顔で呼ぶのだ
湖は、首をかしげて「なんで?」と幸村に聞き返している
「いいから、そっちに行く…湖っ」
「ん?…っ」
ふわりと体が浮くように誰からに持ち上げられる
驚いて後ろを見れば、そこに合った顔は先ほど自分を睨むように見ていた政宗だ
「っ…」
(さっきの…こわい顔してた人…)
びくりと固まり声を出さずに居れば、政宗がじーっと自分を見るのだ
「おいっ、下ろせ!」
幸村がすぐ近くに来ると、政宗に強い口調でもの申す
「…ほせぇ…うすい…かるい…」
持った腰元は、政宗の両手がくっつきそうな程だ
このまま力を加えれば、折れるんじゃ無かろうかと本気でそう思った
「確かにこの年齢にしても、身長と体重の割合が合わなそうですね…」
「湖、お前…やはり安土に戻ってきた方がいいんじゃ無いか?」
側に居た家康と秀吉がその様子を見ながら、口を出してくる
(あづち…このひとたちの くに…)
「安土に来れば、上手いものなんでも食わせてやるぞ。湖」
口角を上げた政宗が湖と目を合わせてそう言うが…
すぐに湖を解放するかのように下に下ろすと、その手を離した
そうすれば、湖はすぐに幸村の背中に回って政宗達から距離を取るのだ
「ちびすけっ」
「…湖、お前…」
幸村の背中にぐりぐりと顔を押しつけるようにする湖に、それをされている本人と政宗が声をかける
すると、小さな拒否の言葉が聞こえるのだ
「…っや…」
(ととさまや、けんしんさまたちのことがいい…っ)
「やだ」
はっきりと拒否する声が