第25章 桜の咲く頃 二幕(六歳)
政頼の鼻先に突き出る刀
「お前…まだ懲りないか…」
「ちょ、ちょっとですっ、信玄様!目に入れるなと申されれば、もう一切見ませぬっ!」
『安心しろ。信玄、そやつは六歳児の体型に惹かれているだけで、湖には…』
「それは、聞き捨てならんな」
増えた刀は、信長のものだ
「う、宴の席でして…その…ひいぃ…」
「謙信、お前のとこの武将はとんだ変態だな」
「…半年後、沙汰を出す。今はお前の酒が必要だからな」
「け、謙信様っ!!」
この後、半年ではなかったものの飯山城の城主は武田 信玄となる
異例の領土渡しではあったが、謙信はこの地の事を配慮し、理由を知ってなおかつ悪用せずに秘密を守ることの出来る城主
なにより、登竜桜と接触出来る人物を選んだ結果であった
それはまた、もう少し先の話になる
『身からでた錆だ…幼子のお前に、せっかく忠告してやったのに…馬鹿なじじぃだ』
ふぅっと、息を付くものの酒を飲むペースは変らない登竜桜
「刀を下ろせ。高梨は今後一切、湖と佐助との接触は禁ずる」
「え…俺ですか?」
不意に出た名前に佐助が驚く、側にいた幸村も
「お前も勘がいいのか、鈍いのか…いかがわしい目で見られていたことに気づいてなかったのか」
カチリと、音を立てて刀を鞘に戻した信玄が佐助にそう言えば、佐助は一瞬だけ驚き「なるほど…戦国武将には男色が居るとは書籍で読んではいたが…」とぶつぶつと言い始める
「えー。おじーちゃん、おもしろいのに」
「…湖…いいか。万一、このじじいに体を触られたりいかがわしい事をされたら、即俺に言え…いや。誰でもいいからすぐに報告しろ」
「うん?…わかった…」
解っていないだろう湖の表情に、信玄を始め皆がため息をつくのだ
「あ。それでね、さっきのおはなしだけど…なかよしじゃないのに、どうして今はいっしょにいるの?」
思い出したように湖が言えば、三成がすぐに教えてくれる
「同盟です。国と国同士で…仲良くしようという約束を先ほど致しました」
「あ、そうなんだ!じゃあ、おともだちなのね!」
「そうです、湖様」