第6章 おつかい (裏:三成、光秀)
光秀は、湖を片手で支え着物を拾い上げると羽織らせた
「…面倒な男に目をつけられたな」
ふんと、いつものように笑うのを見ているうちにようやく安堵する
「光秀さん…」
着物の前を抑えたまま、下を向きボロボロと涙を零すと
そこへ馬の蹄の音とともに、聞き知った声が聞こえる
「っ湖!」
「湖様っ!」
秀吉と三成、それに数人の家臣が長屋に駆け寄ってくる
それが目に入ると、湖は一気に気が抜けその場にへたり込む
「っ…お前、上杉に何をされた…」
秀吉は、湖に駆け寄ると背中を撫で泣く湖を落ち着かせようとしていた
「ご、ごめんなさい…私…ひっく、」
三成が、家臣を外で待機するように指示をし
室内に残った秀吉と三成が光秀から話を聞く
謙信と湖に面識があったであろうこと
そして鈴のことを把握していること
秀吉は、顔をしかめ
「龍が生きていたか…しかも湖が目を付けられてるなんてな…」
三成は着付けた湖の横に座りなにも言わずにその背を擦っていたが、湖が顔をあげたのを見て訪ねた
「湖様、もう大丈夫ですか?」
「うん…ありがとう、三成くん」
湖の着物は袖と襟元が破け、何をされたか容易に想像がつく
「大丈夫…なにも…されてない…あの人、猫に化けて見せろって…出来ないって言ったんだけど…」
ぽつり、ぽつりと話をていく
「私…あの人…謙信さまに本能寺の夜に会ってって…鈴から変わったのを見られてるの…」
「…あの夜に謙信に会ったのか…」
光秀が壁に寄りかかりながら小さく呟いた
「他に鈴様と湖様のの事を知ってる方はいますか?」
三成の問いに、こくりと頷くと
「謙信さまと一緒にいた男の人…三人と…あの夜と、あと今日会った顕如さんってお坊さん…」
「っ…!湖、顕如に会ったのか?!」
秀吉が驚きを隠さず詰め寄った
「う、うん…鈴の姿で…きょ、今日は人に戻ったところ見られちゃって…」
「思わぬところで裏がとれたな…本能寺を襲ったのは顕如で間違いないだろうな」