第25章 桜の咲く頃 二幕(六歳)
『6つ。湖、お前は今6つだ。生活に困らぬよう常識的な知識も与えてある…わかるか?』
「うん…なんとなく?」
『それでいい。さて、さきほどの続きだが…覚えているか?』
湖は、少し黙ると登竜桜をまっすぐ見つめて言った
膝をついている登竜桜より、その目線は上にある
下にある登竜桜の目をまっすぐ見て…
「おぼえてるよ。つかいすぎると、湖と鈴のちょうせいができなくなるって…桜さま言ってた」
『そうだ』
「…じゃあ、なんかいならだいじょうぶ?」
『やはり、そう言うか……三度、三度だけ許可する』
「三かい…」
何かを考えるよな湖の仕草
『黒い靄の色が濃くなっても、それは一時的なものだ。お前だって風邪を引けば、黒とまで言わないが靄がかかる。病の根本は、少しずつだが良くなっているんだ。色が濃くなったからと言って、その度にお前が力を与えても良くならん…一定の時期に、一定の力を与える。それが、良い薬になる』
「…そっか…おくすり のみすぎも よくないもんね」
登竜桜に流され、納得したように顔を上げる湖
『解ったか?』
「わかった!湖、お約束まもれるよ」
(こうゆう所は、小さな湖と変らんな)
再びトンと、額に指を触れれば一瞬だけ湖の額に桜の文様が浮かんだ
『さて…その髪の毛、少し整えてやるか…』
「…ううん。ととさまにきいてからにするー」
「信玄にか?」
白粉の言葉に、湖は笑みを浮かべ頷く
「うん。ととさまが、ながいほうがいいーっていったらこまるもん」
えへへっと笑って、信玄の方を向いて手を振る湖
気づいた信玄が笑みを浮かべているのは遠目でも解る
その様子ににんまり口角を上げた登竜桜が聞いた
『湖、お前…かかさまと、ととさま。どっちが好きだ?』
「どっちも!さすけにーさまも大好き、桜さまも大好きよ」
その答えに、毒気を抜かれる登竜桜
白粉は解っていたようにクスクス笑った「湖らしい」と言って
「兄様…その響き、good!」
さすけが親指を立てる(笑)と、湖が小首をかしげた