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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


『まだ臍を曲げたままか…儂が悪かった。かかさまの怪我は直した』
「湖、ただの親子げんかだ。いいかげん、許せ」

信玄のあぐらに収まったままの湖は、前方から登竜桜、横から白粉にそう言われて…ちらりと、白粉の方を向く
目が合った白粉は、柔らかく微笑んで頷くのだ

「…わかった…でも、こんど また けんかしたら、湖、さくらさま、きらいになるからねっ!」
『…善処すると約束する』
「ぜんしょって…なぁに??ごまかするだめっ!ぜったいなの!」

気まずそうに、あらぬ方向を向き湖に聞こえないように舌打ちをした登竜桜
再度むき直して

『わかった』

と、言うのだ
これには、白粉が笑いをこらえるのに必死になった
口元を押さえて、肩を震わせているのだ

「…白粉さんのそんな姿、初めて見ました」
「あぁ…私も、おかか様のあんな姿、初めて見た」

佐助と、白粉が顔を合わせて笑う
登竜桜は『参るな…』とため息を零すのだ

「…湖は、すごいな」

感心したような声が、上から聞こえる

「なぁに?ととさま?」
「いや、神様相手にすごいな…と思ってな」
「かみさま?かみさまってえらいの?」

信玄と湖のやりとりに、登竜桜が加わった

『偉くはないな。人間とは異なるから、大半崇められる対象ではあるが…儂らは偉いわけではない…お前が、湖の父役の者か?』
「湖から話は聞いていた。桜様…と呼んでも、かまわないかな?」
『あぁ。構わん…なるほどな、其方が湖の大好きなにーたんか…』

目を細めて、信玄の胸元を見れば濃い煤色の塊が見られる

(…臓器の病か…これは時間がかかるな…儂が手を加えればすぐだが…湖の気持ちを育てるのも、約束事を守らせる一環にもなる…湖に任せるか…)

くしゃくしゃと、湖の頭を撫でれば鈴のいい音色が響いた

『客人たちは、しばし此処で待て。白粉、佐助、湖…お前達はこちらに来い』
「はい。おかか様」
「あ、了解しました」
「はーい」
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