第25章 桜の咲く頃 二幕(六歳)
四人が立ち上がって、古木の方に近づく様子を見ていた武将達
その中の一人が口を開く
「まさか、神と呼ばれる者とまた遭遇するとはな…本当に退屈させない娘だ」
「…貴様、先ほど湖を預けると言ったが…湖は越後の者だ。安土にやるつもりはない…覚えておけ」
信長に謙信がそう言えば、秀吉が「なんだと…」と食らいつく
ただ、同盟関係を表面上だけでも設けている中だ
両者の大将が手出しはさせない
「…全く、いい迷惑だ…あの娘(こ)のせいで、武田と席を共にするなんて…」
「そうか…なら、湖はそのまま俺が預かろう」
「な…っ」
「家康様はそんなお心の狭い方ではありませんよ、信玄様」
家康のつぶやきに、信玄が返せば…それを耳に挟んだ三成が信玄に微笑んでそう言う
「あー…俺は、直江だな…あいつはどうにも好かない…」
「政宗が、好かない人間など少ないが…珍しいな」
「性格不一だ。仕方ない…あいつは、真面目過ぎて掴むところが無い」
「…なるほどな」
政宗が、面倒そうに呟くのに光秀が笑った
「…」
「どうした?幸村」
「いや…あいつらだけ呼ばれて…何が起こるのかと…」
「あぁ…そうだな」
幸村が黙ったまま、佐助達の方向に目を向けていれば信玄も、また他の武将達もそちらに目を向け返す
離れたその場の声は聞こえない
ただ姿だけは、確認できた
三人は、登竜桜の前に立ち後ろ姿が確認できる状態だった
視線の先では…
『人の作る酒は、心地が良くなる。もう一度飲み始めれば、酒が無くなるまで動きたくなくなるからな…さっさと、用をすませるぞ』
腕組みした登竜桜はさも当たり前のようにそう言い、まずは白粉を手招いた
「おかか様…飲み過ぎはほどほどに…」
『人間と関われと言っておきながら、飲み過ぎるなとはなんだ。いいか?次来るときは、あの倍量…酒を持ってこい』
白粉の額に指をかざすと、ぽぅっと桜色の淡い光が白粉の体を包んだ
『…これでいい。また一ヶ月後、力を分けてやるが…あまり巨大化の変化はするな。消耗が激しくなる』
「…先ほどの事なら、あれはおかか様が…」
『次、佐助だ』
白粉の話を最後まで聞こうとせず、佐助を呼ぶ登竜桜
白粉は、はぁっとわざと聞こえるような大きなため息をつき下がると、入れかわりに佐助が登竜桜の前に立つ