第6章 おつかい (裏:三成、光秀)
「なんだ、これは」
謙信の目に入ったのは、ショーツ
着物にはすっかり慣れたが、下着がないのがいまだになれず湖は洗濯が間に合えば、ショーツを着用していた
謙信の声は耳に入らず、「離して」と訴える湖は彼から離れようともがくが…
「なんだと聞いたんだ」
謙信は、ショーツの腰のあたりを摘まむとそれを引っ張る
「やっ、やめ…!」
「…これは絹か…?それにしては薄い…」
するりと、腰から下ろそうとすると湖の抵抗は更に激しくなり囲っていた手を離れてしまった
ひざ下まで下されたショーツをギュッと掴み、身体を隠し着物を取ろうと手を伸ばすが、その手を引かれうつぶせに倒される
その背中を片手で抑えるつけると、片膝を立てて湖の背中を見る
「お前は…本当に人か?」
謙信の目に入るのは、白い透明な肌
今まで組み敷いた女のどんな肌より、やわらかく白く滑らかだった
そんな肌の一部、着物を脱がせた際に付いたろう筋のような傷が肩にあるのに目がいく
そして手首にも赤い跡
「あれくらいで、傷がつくのか…だから女は面倒だ…」
うつぶせにされた湖は体を小刻みに震わせ、頭を振る
「も…もう、やめてくださいっ…」
冷たい手が、背中にあるのを感じつつ謙信に願った
謙信はしばらくそれを眺めると、手を放そうとした
だが、外の気配を感じそのまま
「…誰だ?」
片方は湖の手を固定したまま、片方で刀を握った
ガラッと戸口が開くと、そこには光秀の姿が
「湖…悪いが、その娘こちらに渡してもらおうか…」
「っ…みつひ、でさん…」
光秀が刀に手を掛けると、謙信は薄い笑みを浮かべ
「明智か…面白い。この女には、まだ用がある…当分、帰すつもりはない」
そう言い、湖を片手で自分に引き寄せると刀先を光秀に向けた
光秀は、その様子を見つつも刀を鞘に収めたまま言った
「…それは不可能だ。すでにこの場所は、三成の手のものにも伝えた。秀吉もこちらに向かってくるはずだ…さすがに、謙信…お前でも容易ではないだろう」
それを聞くと謙信は、ひとつため息を零した
「湖をこちらに渡せば、今は見逃してやる…」
謙信は、湖を光秀の方へ押すと「湖…いずれな…」そう言い外へ出て行った