第24章 桜の咲く頃
信長が急に切り出した言葉に、謙信も信玄も眉をしかめる
「こちらは、いつ戦を起してもかまわん…湖を取り返す為、天下統一の為、何とでも建前はある。が、今戦を起せば越後はどうだ?」
「構うか…斬り合いなど、いつ起こっても支障ない」
「……いや…謙信、この地の事が敵陣に知れている状態で、此処を守りながら戦は不利だ…」
「信玄…」
信長が口角を上げ、不敵な笑みを浮かべると
「そうだな、此処を一番に叩くだろうな…」
「…おい…此処は湖にとって…」
「構うものか。死ぬわけではあるまい…光秀の話からするに、元に戻る為の場所…体の不調が起こらないのならば、こどもであろうが湖は湖だからな」
幸村が口を挟むも、信長は平然と言い切る
それを信玄が、苦虫をつぶすような表情で
「お前はそうゆう男だな…」
そう言い手を握った
「そう嫌な顔を浮かべるな…同盟を受け入れるならば、この件すべて忘れてやる」
「記録にも残さず、誰の耳にも入れ無いことをお約束いたします。また戦になったとしても、織田軍はこの地に害を与えない事もお約束いたしましょう」
信長の言葉に、三成が説明を付け足すように言葉を発した
それを聞き、信玄が信長に対して問いかけた
「保証はあるのか…」
「…神など…そんな者が俗世に居ると知れ渡れば、民に混乱を招き、余計な戦を増やすばかり…それに、此処だけにそのような者が存在しているとは限らんだろう…」
「…力目当ての国荒らしが始まるってわけか」
広間に沈黙が訪れた
「…半年の同盟、受け入れてやる。湖が戻るまでだ」
「謙信様…」
戦狂の謙信が出した言葉に、佐助が驚きの表情を浮かべた
「戦に負ける気はせん。だが、戦をしながら湖やお前、土地神との時間…湖だけではない。お前も元に戻れなくなる…正直、気分は悪いが…仕方あるまい」
「その間、湖は…」
秀吉が口を開き始めたとたん、バタバタと走る音が聞こえ全員の視線がそっちに向いた
「とーとーさーまーっ!おじーちゃん、こっち きたくない ってー!」
童の声が、城中に響き渡るのだ