第24章 桜の咲く頃
場に合わない声、信長達には聞き慣れない声がした
声の出所を見れば、信玄に抱えられた童が目をこすりながら寝ぼけまなこで父親を呼ぶのだ
「もう少し寝てろ」
「んーん…かかさまは?」
「…大丈夫だ。側に居る」
「んー…」
目を隠すように覆えばまた眠りに落ちていく童
「ととさま…だと?」
「その童が…湖…」
秀吉と、政宗が信玄の方を凝視するのだ
「…だとしたらなんだ…貴様らには関係の無いことだ」
謙信が束を持つ手に力を加え、鞘が小さく音を立てた
「関係ないだと?それは、俺の物だと言ったはずだ」
今まさに誰かが刀を抜いてもおかしくない状況で、怖々と声を出したのは…
「あの…その…広間をご用意いたしますので、そちらでお話をされては…っ、いかがかと…」
ごっくんと唾を飲込む音が聞こえそうだ
「いかがかと、思うのです!」
最後はとてもつもない早口で言い切ると、こっそり影からのぞき込んでいた飯山城の家臣達は「殿!頑張られました!!」と、心の中で絶賛しているのです(笑)
そして、凍り付いたその場の空気をそのままで…場所は広間へと移された
「け、謙信様、今…茶を…」
問われた謙信は「不要だ」とそう言い黙った
「…このままでは、話が進まなさそうですので…俺が失礼して質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
沈黙の場を佐助の声が通る
「本来、敵の質問には答えたくも無いが…状況が状況、答えられる事なら答えよう」
「ありがとうございます。秀吉さん」
「…お前、以前会った忍だよな…」
秀吉の返答をもらい、佐助が話し出そうとすれば
政宗が眉間に皺を寄せ佐助を見た
「はい。湖さんが崖から落ちた際に家康さんと政宗さんにはお会いしています。お久しぶりです」
「佐助…挨拶はいい」
謙信が佐助の様子を見て声を挟む
「では、さっそくですが…信長様達はいつこちらに?」
「昨夜だ。城内の者が寝入った所で、城主の寝室に邪魔させてもらった」
「それで一気に城を納めたと…」
「そうだ。信長様にかかれば、こんな事は造作も無いことだ」
「…なるほど。謙信様、飯山城のセキュリティシステムを整える必要がありますね」
「せきゅりてぃ、なんだ?それは、武器の事か?」
佐助の質問には秀吉が間髪置かずに答えていく