第24章 桜の咲く頃
「意外だな。同じ色を使うかと思ったが…」
「そう思ったがな…呉服屋が、湖に似合うと進めたのがあの色だ」
飛び跳ねていた湖が、二人の元にやってくると…
「ととさま、ももそめってなぁに?」
「色の名前だ。それはな、桜の花で染めた色だ」
「さくら!さくらさまといっしょね!けんしんさま、ありがとー!」
ふわりと笑った顔が一瞬大人の湖を思い出させる
「構わない」
(そうだ。桜からの染色した色…今の湖にはふさわしいだろう…)
無意識に緩む頬
「謙信様、馬の用意が出来ました」
そこに佐助と兼続が馬を連れてやってきた
白粉は馬が好きではないらしく、姿を猫に変え湖に抱きかかえられていた
その湖を信玄が自分の馬に乗せる
「ととさまと おうまさん!またいっぱい はしるの?」
「あぁ。また駆けるか?」
「うん!」
「では、お気をつけて!謙信様、お約束は忘れずにっ!…遅くとも明日にはお戻りくださいませ!」
本日…と言いたいのをぐっとこらえる兼続
兼続が叫ぶ中、謙信、佐助、信玄、幸村は飯山城に向かって馬を走らせ始めた
「ちびすけ、平気か?」
走り出し直後、幸村が信玄の横に馬を受け湖に尋ねるが…
「へーき!もっと、もっとっ はやく!!」
心配をよそに湖は、もっと走らせろとせがむのだ
「湖さん、楽しそうです」
「この分だと、大きくなってすぐに一人で乗ると言いかねないな」
佐助が振り向きながらそう言うと、信玄が少し困った表情で笑った
『だめだ、危なすぎるだろう』
すると、白粉がすかさず口を挟むのだ
「構わん。湖が望めば、教えていい」
その白粉を否定するように謙信が言い捨てる
『……』
「白粉、使える力は多いにこしたことはない。悪いことでは無いぞ」
「かかさま?」
『…湖が望めば、望めばな…』
しぶしぶ同意する白粉は機嫌が悪そうだ
「さて、駆けるぞ」
そう言うと、四頭の馬が一斉に駆けだした
「これで行けば昼には着きますね」
佐助の宣言通り、飯山城には昼過ぎに到着することになった一行
警戒し居ていた織田の接触も無いままに