第24章 桜の咲く頃
三成は、この場から連れ去りたい気持ちをぐっと抑え湖に小さな小瓶を手渡した
そこに入っていたのは
「こんぺいとー?」
「ええ。此処に来る途中で珍しいのを見つけたので…これを差し上げます。「かか様」が来るまで、これを食べててください。気が紛れますよ」
手渡された金平糖は、昨日食べたものとは色味が違った
白以外に、桃色や黄色の物も入っているのだ
「わぁ…きれい…」
湖の顔に笑みが浮かぶ
「「かか様」たちには見つからないようにしてくださいね」
「わかった!にーたん、ありがとー」
カランカランと、小瓶を振って音を立てる湖
それに夢中なうちに、光秀と三成はその場から立ち去った
小さな童の声を背に
「きれー、おほしさま、みたいー」
無邪気な声が耳に残る
宿から二人が出て少し距離を取った時だった
宿の屋根に大きな動物が降り立ったのだ
真っ白なそれは少年を乗せてた
そして、少年を下ろすと小さく姿を変え…それは白い猫になった
二つの影は屋根からまっすぐ、湖の居る部屋にと降りると…
「湖さん」『湖』
背中の方から、佐助と白粉の声がし湖は首だけそちらを向けた
そして、二人の姿を確認すると満面の笑みを浮かべるのだ
(あ…)
だが、手に持つ金平糖を思い出した湖は一瞬顔を元の位置にもどして、自分の懐に小さな小瓶を仕舞う
そして、再度二人の方に今度は体毎振り向くとその名を呼んだ
「かかさま、にーたん!」
白粉はそれを聞き、姿を人に変えると、駆けてくる湖をしっかりと抱きしめた
「…っ良かった…」
「かかさま」
湖もまた白粉の着物をしっかりと掴み、その温もりと心音に安堵を見せる
佐助もほっと肩を落とすと、湖と同じ視点に腰を下ろし尋ねた
「湖さん、ここに誰か居なかった?」
「…ううん…えっと…めがさめたら、ここだった」
目を見れば、湖が何か隠し事をしているのはすぐに解る
それでも佐助は「そっか」といい、湖の頭を撫でるだけした
(あとから確認を取ればいい…ひとまず、無事で良かった…)