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【イケメン戦国】私と猫と

第24章 桜の咲く頃


光秀が出した名は、自分の通り名と三成の幼名だ

「そうか…お前は…自分の名前はわかるのか?」
「?…湖だよ。湖、みっつ!こんどね、もうちょっとで、むっつになるの!」
「…四つや、五つは何処にいったんですか?湖様」

ようやく三成が声を出した
その声はいつもとは異なる優しく、どこか悲しそうな声色だが、幼い湖に解るはずもない

「わかんない。さくらさまも、かかさまも、にーたんも、みんな、つぎ、湖は むっつだって いってるもん」
「…つぎ…ですか…?」
「…湖が、こうなった理由のようだが…この童に聞いても理解は出来んだろうな…」

三成が光秀の方を向けば、三成もまた光秀の方を向いていた

「…湖様を連れてきたのは、記憶の確認…でしょうか?」
「そうだ。もともとその確認だけで、連れ帰るつもりは一切無かった」
「…そうですね…状況が解らない…今、動くのは得策ではない」
「…まさか、お前が追ってくるのは想定外だったがな…佐吉」

佐吉と呼ばれ、三成は「懐かしい名前ですね」と含み笑いを見せる
視線の先を湖に戻した三成はゆっくり話し出した

「…湖様、私たちに会ったこと…秘密にできますか?」
「ひみつ?どーして?」
「私、佐吉と十兵衛は、普段城から離れて仕事をしているのです。領内に居ると謙信殿に見つかれば…」
「わかった!けんしんさま、おこるのね!かたな、ぶんぶん おっかいもんね?わかった。湖、ないしょにするよー」
「それは助かる」

光秀達二人の方を向き、任せてというように「できるよ、ないしょ」っと繰り返す童
二人はそれを見て苦笑する

「さて…そろそろ追いつかれるだろうな…此処を離れるぞ、佐吉」
「ええ、解りました」

二人が立ち上がると、湖は「どこにいくの?」と光秀の袴を引く

「お前はここで待て。すぐに「かか様」達がくる」
「っ、ひとり、やだ!」
「…湖様、すみません…ですが、近くで見ています。湖様がちゃんと「かか様」と会うまで、見守っていますから安心してください」

屈んで湖と目を合わせる三成
その頭をぽんぽんと撫でるようにすれば

「かかさま、くるまで…いっしょに いて…」

と湖が涙ぐむのだ
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