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【イケメン戦国】私と猫と

第24章 桜の咲く頃


そしてなにより、この童が湖だと確信させるのは…香りだ

甘い花の香りがする

間違いなくこの童から…

「…覚えてないのか?」
「あれ…かかさまは?にーたんは?!湖のかかさま、どこ…にーたん、しってる?」

そう言い、座っている三成の着物をひく湖

「…湖…さま…」
「かかさま、かかさまっ…にーたんっ…ひっく、ひっ」

三成に名前を呼ばれるだけで、周りに居ない者を求めて湖が泣き始める

「やはり完全に記憶がないか…というより、童だな」
「…っ…」

声も押さえず泣く童
三成が対応を躊躇していれば…
湖の体を優しく抱きしめたのは、三成の横に座った光秀だった

「…しー…、湖、湖…大丈夫だ、落ち着け…」
「っ、ひっく、…うっく、ん、…ん…」

抱きしめられれば、湖の顎が光秀の肩にちょうど乗る
その状態で顔を合わせず、ただ優しく抱擁してやる
そうすれば、湖の泣く声が次第に落ち着き出すのだ
優しいぬくもりに警戒心が薄れたか、光秀の着物の袖を握りしめた湖

「お前を攫った浪人ならもう居ない…安心しろ」

ぽんぽんと、背中を叩いてやる

「いない?…ひっく、…こわい、ひと…いない?」
「あぁ。居ない、安心しろ」

優しい声色のこの男
湖は初めて会う男ではあるが、自分の名前を知っていることから…

「にーたん、おしろのひと?」

と、そう思った

「…あぁ。城の人間だ…これからお前を、かか様の元に返してやる。だから泣くな」
「っ、かかさま、しってるの?うん。湖、なくのやめる」

握られた着物が、今度はきゅうっと引くように力が加わった

「えらいな」

顔を上げれば、白粉と似た髪色に切れの長い目
整った顔立ちの男が、目を細めて湖を見ているのに気づく
湖の手が着物から離れると、光秀は自分達二人と向き合うように湖を立たせた

「…にーたん、おなまえは?」
「俺は、十兵衛。あっちは佐吉…城の使いの者だ。覚えはあるか?」

じっと二人の顔をみて、湖は首を振った
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