第24章 桜の咲く頃
「…俺も抜けていた…そうだよな、猫だもんな…解った。その辺のことは、大きくなるまで俺が面倒を見てやる…父親代わり引き受けた。いいな?白粉」
「私は構わんが…湖はどうだ?」
「んんーー。しんげんさまが ととさま?」
「いや、ごっこだ。湖、あくまで「ごっこ」だぞ」
「いいよー!じゃあ、しんげんさま、ととさまね!にーたんもね!」
言われた佐助は自分を指さし、「俺も」と口に出さずに問う
「男は要らんが…湖が言うなら仕方ないか」
「では…父上」
「ちちうえだってー、にーたん、おもしろーい」
「…佐助に言われると、なにか嬉しくないな…」
「なんですか?父上」
「わざとはやめろ」
本気で青くなる信玄に、笑いを抑えない湖
そのうち御膳が下げられ、湖がうとうととし出すと白粉はその身を抱えて部屋に下がっていった
「今夜は、おそらく鈴も出てこないだろう…よく動いていたようだからな」
と、そう言葉を残して
男だけが部屋に残ると、佐助は「では…」と口を開いた
「安土城から明智光秀の姿が消えたと報告があり、軒猿で調べていたところ…」
「越後に居たか…」
「確信までは至っていませんが、おそらく越後に入っています」
「湖の事が漏れたか…やっかいだな」
謙信は至って冷静に、信玄は面倒そうに答えた
「まさか、姫様を取り戻しに…」
「いや、探してって言った方が的確じゃねーか。ま、あんなちびすけを見ても湖だと認識するのに時間はかかると思うけどな」
兼続が顔を青ざめると、幸村はため息をつきながらそう言う
「だけど、幸村。湖さんはあと十日もすれば次は六歳の姿になる…徐々に面影もはっきりしてくるから油断は出来ない」
「六歳児だろ?今と大してかわらねーよ」
「何を仰る!真田殿!女児の成長は早いですぞっ、確かに六歳と言えば…胸の膨らみも、尻の丸みもありませんが、あの中性体の体は魅力溢れる…っ、、?!」
政頼が幸村に熱く説いていれば、その首筋に冷たい刃物があたった