第24章 桜の咲く頃
金平糖はすでに溶けたのだろうか
湖は、信玄を見て首をかしげていた
「どうした?湖」
「ととさま…」
「んーーー」と眉をしかめる湖に、その場の全員が注目をする
「湖ね、おおきくなったら にーたんか、しんげんさまと けっこん したいの。ととさまでも けっこん できるの?」
「「ん??んん??」」
指名された佐助と信玄は、一瞬固まってしまう
それに対し、誰よりも早く口を開くのは兼続だ
「湖…様、いえいえ…それは、いけません!某の予定では…ありませぬ!!」
「よていってなぁに?」
「予定というのは…」
「信玄、佐助…貴様たち、湖に何をした…」
「謙信、宴の席だぞ…刀を抜くな。何もしていない、するわけ無いだろう?まだこどもだぞ。真に受けるな」
「俺も兄としては接していますが、特にやましいことは何もありません。食事のあとで報告もありますので、今から乱闘はやめましょう。謙信様」
側に置いてあった刀に手を掛けた謙信を、信玄と佐助が押さえようとする
その横では、湖が白粉に呼ばれ話をしていた
「んんーーじゃあ、湖 だれと けっこんするの?」
「…湖、お前はまだ三歳だ。これから大きくなって考えればいいだろう?」
「そうなの?」
「そうだ」
「…わかった!じゃあ、そーする!」
「そうしろ。十分考えろ…どうしようも無い男であれば、私が跡形もなく始末してやる」
ぞわりと、幸村と政頼の背に悪寒が走った
「白粉、お前…それやめろ。殺気なのか、妖気なのか…だだ漏れで恐ろしいだろうが」
「そんなつもりはないが…」
「それ、先ほど…同じようなことを、儂に言われましたな」
振り向いた白粉の目が怪しく光ったのは、二人しか見ていない
話に飽きたのか、立ち上がってとてとてと、童が歩き付いた先は謙信の膝の上だ
ぽすんっと、音を立ててあぐらの中に収まると…
いつの間にくすねたのか、金平糖をつまんだ指を謙信に差し出した
「はい、けんしんさまにも あげるー」
「…俺は甘い物は好かん。お前が食え」
「おいしいよ?けんしんさまも たべよー」
眉間に寄った皺は、食べる気のなさを伝えている
だが、代わりに別の物を指でつまみ湖に見せるのだ