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【イケメン戦国】私と猫と

第24章 桜の咲く頃


白粉に抱えられてた湖が身を乗り出すようにし、信玄の肩部分の着物を握る

「落ちるぞ、湖」
「あ。白粉様。白粉様と湖様も。それに後ほど、真田殿と佐助殿もいらっしゃいまする」
「湖もっ!湖もいいのっ?」
「はい。高梨様が是非お会いしたいと仰っておりまする」

白粉からぴょんと飛び降りた湖は、信玄の手と白粉の手、それぞれに手を繋いで喜ぶように跳ねた

「…兼続、湖と白粉の件は…」
「高梨様には説明しております。訳は、信玄様が直接お聞きくだされ」
「…解った」

(高梨政頼…先代世代の武将…戦場で直接刀を交えたことはないが、戦術は基本に忠実でまじめな人柄なのだろうと感じてはいたが…)

「初対面だな」
「さようでございましたか?高梨様は、信玄様をご存じの様子でしたが…」
「?そんなはずはないが…」




「いやいやいやいや。あの若君がこんなに男らしくなられてるとは…前回の戦で大敗したのも仕方ないなぁ」

広間に行けば、そこにはすでにできあがった政頼と、梅干しをつまみに酒を飲む謙信が居た

「遅いぞ…」

謙信は、この酔っ払い相手にうんざりな様子だ
高梨政頼、謙信や信玄より一回り以上年上の武将で、彼らの父世代の同期だ
濃い眉に、形のよい口髭は左右対称に剃られ、頬から顎に掛けても政頼によく似合う細い髭で整えられていた
その頬や目元、それに首には年齢相応の皺が見られる
その彼が、君主を目の前に酔っ払ってしまっているのだ
一体謙信が、どれだけのペースで飲んでいたのか…見てよく解る

「お前の酒に合わせていたら、だいたいの人間がこうなるだろうよ…」

信玄が、目の前の光景に呆れ半分で座った
その背中に隠れるように湖が付いてくる
そして少し離れた場所に、白粉と兼続が座る

「ところで…俺はあなたに初対面だと思っていたのだが…」
「いやいやいや。お父上に連れられた三歳くらいの貴殿にお会いしたことがありまするよ。かわいい若様でした…ちょうど、その姫くらいでしょう」

ぴっと指をさされた湖は、びくりと背筋を伸ばし、すっぽり謙信の背中に隠れた

「おやおや」

ヒックヒックと、しゃっくりを上げながら酒を飲む政頼
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