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【イケメン戦国】私と猫と

第24章 桜の咲く頃


しばらく城下周りを走った信玄は、緩やかな川を見つけるとそこに降り馬を繋いだ
そして、馬の背にがっちり捕まっていた湖を下ろしてやる

「少し休憩だ」
「うん!あ。しんげんさま、かわだ。おみず のんでも いい?」
「ちょっと待ってろ」

そう言い、竹筒を出そうとするが湖が「いい」と言ったと同時に鈴の姿に変わると川に駆け下りていくのだ

「あ。こら、鈴の姿で川に近づくなっ!」

信玄も落ちた着物をすぐに拾うと、鈴を追いかけ川辺に降りる
そして案の定、川に落ちかけた鈴を掴むと息を吐いた

「湖…鈴の姿で水を飲めば、飲みやすいだろうが此処は流れのある川だ。そんな小さな体、あっという間に流されるぞ」

にゃぁ…

猫は耳を折り、濡れた体を振るった

「こら、俺は怒ってるんだぞ」

にゃぁ!

「…湖、戻りなさい」

信玄の顔を見上げた猫は、少し考えたように間を置くとその姿を変えた
今、信玄の腕の中にいるのは裸の童だ
持っていた着物を片手で器用に羽織らせて、湖を下ろすとしっかりそれを着せていく

「いいか?お前のそれ…猫の姿に変れるのは特別なことなんだ。外で人の有無を確認せずに変わるのはやめなさい」
「どーして?」

帯を結ばれながら、首を捻って信玄を見れば
信玄は厳しい表情で言った

「怖い人に攫われたらどうする」
「っ。わかった、湖 きをつけるよ!」

驚いた顔を見せぶんぶんと頭を縦に振る湖、その髪の毛から滴が落ちた
おそらく川に落ちかけた時だろう
懐から手ふきを出すと、草原の上に座った信玄は湖を手招きで呼ぶ
素直に応じた湖は、信玄のあぐらのなかに収まった

「ほんとに解ってるか?」

笑い含みの声、優しく髪を拭く仕草
湖は、それに心地よさを覚えるのだ

「しんげんさま、だいすき」
「あぁ、ありがとうな」

二人はしばらくそこで休むと、また馬に乗ってその場を去った




その姿を林の奥から確認していた人間が居ることも知らずに

「…見なければ納得いかんだろうな」
(予想もしなかった事が起こる…本当に退屈させない娘だな…)

そう言うと、男はくくっと笑いその場を去って行く
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