第24章 桜の咲く頃
一方、安土城では…
湖の捜索をしながらも、近隣の諸国で起きた戦の納めをするなど、武将達は日々忙しい日々を送っていた
「なにか解りましたか?」
「現状報告出来ることはここに…」
三成は安土城の一室で、家臣から書状を受け取った
「おそらく、光秀様が追っているのは其れでは無いかと思われます」
「…これは…まさか…」
「湖姫様と、春日山城の湖という童では年が違いすぎる。いくら何でも、そんなに年齢を詐称できる訳は無いので…」
(いえ…おそらく、湖様で間違いない)
そう口から出そうになるのを飲込むと、引き続きの調査を家臣に命じた
明智光秀の行動調査を
(光秀様が姿を消した…現時点で、越後も武田も顕如も動いては無い…となれば、湖様の関係かと思いましたが…これは、どう報告すべきか…)
三成は書状にかかれた文面を眺めた
(光秀様の姿を越後で確認、その越後…春日山城に最近、神に連れられてきた童が居ると噂が立っている。名を「湖」という小さな女児らしいが…それ以上の情報が漏れていないところは、謙信殿の統率がそうさせているのだろう)
「ひとまず、秀吉様に…」
(いや…)
「…ひとつ…光秀様を見習って動いてみましょうか…」
そう言うと、三成は筆を滑らせ書面を仕立てると女中に持たせた
「これを…家康様に」
馬の駆け抜ける足音と、こどもの高い声、そして鈴の音
チリリリン、リリン、リリンッ
「どーだ?湖」
「きもちいいー!すごーい!もっと、もっと はやく はしって!」
湖は意外にも恐れる事も、泣くこともせずに、それどころかもっと速度を出せ、川を跳んでなど信玄にせがんだ
「おいおい。まだ速度を上げるのか?」
「うん!いっぱいっ」
「…よし…しっかり、捕まってろよ」
「はーい!」
湖の返事を聞き届け、信玄が馬を走らせる
ががっ
蹄が土を踏み込む音、肌を掠る風、馬の背の揺れ、背中に感じる信玄のぬくもり…
すべてが、湖を喜ばせた