第24章 桜の咲く頃
白粉と佐助の方を向けば、二人は少し離れたところで湖を見守るように立っていた
そして目が合えば、優しく微笑むのだ
「わかった…」
『いい子だ。いいか?湖、今は理解出来なくてもまた説明してやるが…聞け。お前は、これから一ヶ月おきに三歳ずつ成長し、本来の姿に戻るんだ。これは、お前と鈴の調和を取る為の調整期間、必要な時間だ。わかるか?』
「わかった!」
どう見ても理解はしていないだろうが、登竜桜はあえて説明を続ける
『時間のかかる調整だ。元に戻るまで半年ほどかかる。その間、お前の今までの記憶は私が預かっておく。小さな童にあっても不要な記憶だろうからな…だから、存分に今を楽しめ。いいな?』
「うん、湖、たのしーのすき」
ふっと、笑みをこぼした登竜桜は
『…お前の過去を覗いた。気持ちはわかるが、何でもかんでも自分の性にする癖はどうにかした方がいい…過去をいつまでも引きずるべきでは無い』
「…??」
『これは、私からの贈り物…いや、お守りだ。なにかあれば使え』
そう言うと、湖の唇を登竜桜の親指がかすめる
ちくりと、なにか刺さったような小さな痛みがし、湖は口元を押さえる
『お前が助けたい、守りたいと思ったら、それを使え。ただし多様はするな、多用すればせっかく整えている調和もうまくいかなくなる。そうすれば、鈴が消えてしまうやも知れぬ…わかるか?』
「鈴がいなくなるのは、やだ」
小さな童は、自分の着物をきゅうっと握る
湖は、鈴が自分の中に居ることを自然と理解しているのだ
「湖、つかわないよ!だって、鈴といたいもん!」
『大丈夫だ、多用しなければ問題ない』
「あのね、湖ね。だいすきな にーたんのここに、へんなのあるの みつけたの!それね、くろくて…もやもやして…おおきくなって、にーたん、おせきするのっ!だからね、それ、ないないしたいの」
湖の言った事に佐助はすぐに理解したようで
「湖さん、それ…信玄様のことじゃ」
「そーよ。にーたん、しってた?あのね、このへん…まっくろなの」
湖が佐助を見上げて、そう言い自分の体を触ったのは胸あたりだった