第6章 おつかい (裏:三成、光秀)
「お前は…っ」
少し空いた窓の下から蛇が顔を覗かせている
顕如が窓を下す前にその体は小屋の中へ落ち、鈴めがけてすごいスピードで張ってくる
(っ…?!へっへびっ…!!)
顕如が、鈴めがけてきた蛇を手で掴み取ると同時に女の悲鳴が聞こえた
「っきゃ…っ」
「?!」
そこにいたはずの猫が、女子の姿へ変わっていた
「な…?!」
顕如は、蛇を握ったまま思考も体も静止してしまう
「へ…っ、蛇っ!!いやぁ…っ」
「あ…」
顕如はすぐに蛇を小屋の外へ放り投げ、戸口を閉じると湖に背を向けたまま
「蛇はもう居ない…お前は…先ほどの猫か?」
そういい錫杖を持ち振り向いた
「っあ…」
(戻ったんだ…あ、着物っ!)
羽織った着物の前をしっかり合わせると、首を縦に振り
「…そう…です」
と、答えた
「…物の怪の類か?」
「ち、違いますっ!普通の人です!ただ…訳あって連れてた猫と一緒になってしまった…というか、とくかく私にもわからないけど、たまに猫の姿になってしまうんですっ」
顕如は訝しげに、湖を見て錫杖を下すと
「…名は…」
「湖…です」
「安土城下のものか?」
「…はい」
ふむ…と、湖から離れ腰を下ろす
「その…体質は、他のものも周知の上か?」
「…一部ですけど、お世話になっている方は理解してもらっています…」
「…世話?」
(いけない…余計なこと話さないようにしなきゃ…この人、知らない人だし…こんな所に住んでるなんて怪しいもの…
)
「…身寄りがないので…お世話になっている方が居るんです」
「奇特な者がいるものだな…良かったな、良い者に世話になっているようで」
優しいまなざしに警戒心が薄れる
「さっさと着物を着ろ」
はっと、気づいたように後ろを見ると着物を着付け顕如に向かい頭を下げた
「先ほどは助けていただいて、ありがとうございました」
礼を言う湖を見つめ、礼を言われることではないと言い森の外まで送ってくれることに