第6章 おつかい (裏:三成、光秀)
一方、馬はそのまま森を抜けた
主人を失った馬は、森の方へ頭を向けるとブルルッと鳴いている
「っ、湖様の…」
森から抜けた三成の手の者が焦って馬に駆け寄る
「先ほど、気づかれたと思って距離を取ったのが失敗だったか…っ、急ぎ三成様に報告に…」
そう言い、湖の乗っていた馬の手綱を引き、城へ戻った
薄暗い森には、水色の着物の上にちょこんと煤色のものが乗っていた
(びっびっくりした…、落馬すると思わなかった…)
煤色の猫は、着物に頭をぐりぐりと押し付けてながら安堵していた
(鈴に変われてよかった…おかけで無傷だもの)
きょろきょろと、周りを見渡すが木ばかり
(どうにか、もと(人)に戻って…)
不意に浮遊感に襲われ鳴き声を上げると、どこかで見た顔が目の前に来た
「お前、本能寺の周辺にいた猫だな…なぜ、このような離れた場所にいる?」
(…思い出したっ!こっちに来た時にあったお坊さんだっ)
下に落ちた着物を確認し、手に取ると
「…これは…?」
紫の法衣に身を包んだ男は、猫と着物を手に歩き出す
にゃぁ?!にゃっ!!
(ちょっと、待って!どこに連れてく気!!)
「そう暴れるな…こんなところにいれば、熊や狼に食われるぞ」
にゃっ
(あ、、それはヤダ…)
「…お前は、言ってることがわかるのか?頭のいい猫だな…」
歩きながら少し考えると、
「独り言を言うようで気が引けるが…俺は顕如という。この着物はお前の主人のものか?」
主人ではないけど、自分のものだと湖は首を縦に振り
にゃぁ!!
と大きく答える
「…そうか、では主人は後程探してやる。お前はここで待て」
優しそうな笑みを浮かべ、猫である湖の頭を撫でた顕如はついた小屋に猫を下した
湖はあたりをキョロキョロ見回すと着物の中に入り顔だけ出した
(いつ戻ってもいいようにしとかないと…)
「…警戒しているのか?」
様子をみて顕如は眉をひそめる
「やはり、お前のような猫は見たことがないな…南蛮船にでも紛れ込んで住みついたか?それとも主人がそうなのか…」
煤色の毛色に瞳の色、左右違って緑と金色に見える
人の言葉も理解しているように思える