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【イケメン戦国】私と猫と

第24章 桜の咲く頃


幸村が全力で走ってくるのだ
その後ろに見えるのは…

「謙信様」
「あ…ちびすけっ!いいとこにっ!!」

そして、湖の脇に手を差し入れその体を持ち上げると、後ろを振り向いて湖を差し出すようにした
その早さに湖は

「ひ、やぁっ」

と、小さな悲鳴が上がった
ぐるんと勢いよく動く視界に、軽く目を回せば…
すぐ目の前には水色の着物が見え

「けんしんさま?」

目の前には謙信の襟あわせが見えるのだ
首を上げて上を見れば、眉をひそめる謙信の顔
そして、チャキ…という小さな音も

「おぉ…」

ぱちぱちと、佐助が手を打ちながら「秘技 湖防御」とぼそりと言うのだ

「ゆき、けんしんさまと、おいかけっこ してたの??」

首だけ幸村の方に向ける湖は、脇に手を入れ持たれているので足をぷらぷらさせながら聞くのだ
片膝をついていた幸村の顔は、湖より下にあった
その表情は…

「…ゆき、あせいっぱいよ?」
「あぁ、汗だくだ…」

とはぁはぁ息を切らしているのだ

「ふーん…じゃ、湖とおふろしよ?」
「…はぁ?」
「いまねー、にーたんがおふろいくのっ!ゆきも いっしょ おふろしよー」
「にーたん、いいとは言ってないはずだけど…」

「湖、なんでお前がこの二人と風呂に入るんだ…」

向いていた方向と反対方向から声がすれば、湖はその方向を見る

「ぱちゃ、ぱちゃ、たのしーもん!みずてっぽうとか、あわあわとか…うん、そーだっ、かかさまも、けんしんさまも、しんげんさまも、みんなであそぼー」

謙信の眉間に皺が増す

「あ、かねつぐもあそ…あれ?かねつぐは?」
「あやつなら、空気を察して出て行ったぞ」

白粉がそう言えば「空気?」と首をかしげるのだ

「湖、風呂に入りたいなら入ってこい。私は、あの水鉄砲なるものは好かない。佐助と行ってこい」

「鼻を休めてくる」といい、よほど火薬の匂いがきつかったのか白粉は絹音を立てて猫の姿に変わると、庭から塀の上にとトントン跳んで上がっていくのだ

「あー。かかさま、じゃあ湖もねこになるー」

それを見た湖がそう言えば、幸村が持っていた重みが無くなり…
幸村の手に着物だけ残れば、ぽとりと子猫が降ってくる
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