第24章 桜の咲く頃
兼続が見た佐助の姿は、着物が多々白く汚れて顔に煤がついているのだ
「ちょっと飛び道具の開発を。この姿では、体術だとやはり引けを取るので」
「あ、にーたん!」
湖は佐助に気づくと、巻物を飛び越え駆け寄った
その湖の額に手を置くと、片腕を突っ張ったまま…
「ごめん、湖さん。にーたん、今、煤まみれなんだ」
と目線をそろえるように腰を曲げ湖に言う
それは、他人がみれば紛れもなく兄妹のよう見えた
「そのようですぞ、姫様。兄上には後ほど遊んでもらっていただき、今はこちらを」
「兄上…なかなかいい響きだ…」
兼続のそれに、佐助が反復する
「はーい」
「…湖さん、ずいぶん兼続さんに懐きましたか?」
「いや、褒美目当てだろう」
兼続に呼ばれ翻し、また巻物に集中し始めた湖を見て佐助がそう言えば、白粉がため息をこぼしながら答えた
「褒美?」
「文字が読めるようになれば、馬に乗りたいそうだ」
「…なるほど。湖さんらしい」
「…解らなく無いが、だがまだ小さい。馬など早いと思うがな」
そんな風に言うところをみれば、白粉は面白く無いのは見て解る
「まぁ、いいじゃないですか」
「…お前は、一体何を作ってるんだ?火薬の匂いか?」
「そうです。こう…花火の小玉番を…目くらまし兼、拡散兼、意表をつく道具として…」
すると、白粉が鼻に着物の袖口を持ってくる
「その匂い…鼻につく…」
そういい眉をひそめるのだ
「あ、すみません。もう終わったので、風呂に入って落としてきます」
「お風呂?!」
「あ…しまった…」
佐助がはと気づくがもう遅く…
「お風呂?!湖もいくー!にーたんとあそぶー!」
「え…っ、ちょっとお待ちを…っ姫様っ?!」
バタバタバタ…
「「「??」」」
なんだ?と、鼻を押さえていた白粉以外が音の方向を見ようと
佐助は庭先から振り向き、兼続と湖は部屋の入り口に移動し、その方向を見ていると…
「ゆき?おいかけっこ??」