第24章 桜の咲く頃
白粉の膝の上にいた鈴は、白粉が構ってくれないと解るとその膝を飛び降り、きょろきょろと周りを見ている
「鈴」
名を呼ばれれば、ぴくりと動く耳
くるりとそちらを見る
そして、そこへテコテコと歩く鈴
にゃぁ!
青い袴に片足を乗せると「来たよ!」とでも言いたげに顔を上げた鈴
その鈴を両手で抱えると
「お前も子猫に戻ってるんだな…」
と、鈴を見てふっと口元を緩める謙信
「神隠しに遭い姿を消したと聞いた際には、色々疑い探したが…まさか、ここから遠くないところに居たとはな…」
「そうだな…」
信玄の言葉に相づちをうつ謙信
その横で幸村と佐助が…
「っーか、この城にこんなちっせいのがこれから居るのか…危なくねぇか…」
「そうだな、その通りだ、幸村。うん。ひとまず、謙信様にはせめて湖さんが10を超えるまでは、城で刀を振りかざすのはやめてもらおう…教育上よろしくないから。兄としては見過ごせないな」
チャキ…
聞き覚えのある音に、無意識に間合いを取ろうとする
幸村と佐助
「佐助…貴様、一ヶ月俺の前から姿を消し、ましてやそんな姿になって…腕は落ちていないだろうな…これから試してやろう」
「謙信様、鈴はどうしたんですか」
すると、信玄が鈴の両手を持ってひらひらと手を振るかの用に揺らす
「小鈴なら、ここにいるぞ。安心して腕試ししてもらえ」
「信玄様…裏切りましたね」
「大丈夫だぞ。兄の代わりに、しっかり俺が子鈴と遊んでてやるから」
佐助は懐から小刀を取り出すと、ため息をつきながら構えたが…
その横の幸村はまだ刀に手をつけてはいない
「お、俺はやめとく!こんな夜中に非常識に騒ぐもんじゃねぇ」
「遠慮するな、お前はここ一ヶ月鍛え直してやっただろう。これもその一環だ。こんな童相手では、俺が満足するはずも無いからな」
「…言ってくれますね、謙信様…童の体には、童なりの利点もあるんですよ」
「やめろっ、佐助。挑発するな!お前のせいで、俺はずっとこれだったんだぞ!」
「幸村、俺たちはマブダチ。いわば、運命共同体。ふぁいとー」
「なんだ?!よくわかんねーことばっか言うな!しかも、そのやる気なさそうな言い方!すごくむかつくぞ!」