第6章 おつかい (裏:三成、光秀)
(ちょっと走ってから、城下の露店に行こう)
いい天気、草木のにおい、風の音
「っ全部、ぜーんぶっ新鮮!気持ちいいっ」
しばらく走ると、そこは花畑と畑の平坦な景色だった
馬を止め息を吸い込む
(すごくきれい…空気がきれいってこうゆう事を言うんだな…)
馬がひんっと鳴き、手綱を引いた
「ごめん、あなたは走りたいよね?」
そのとき来た方向を振り返ると、さっと隠れた人影を見つけた
(っ…!なに…いま…)
この間の軍議で、信長を本能寺で暗殺しようとした話が上がったのを思いだし身をすくめた
(ちょっと遠くに来すぎたかも…すぐに城下へ引きかえそう…)
今は、人影が見えない
気のせいかもと、そう思いつつも急いで引き返す事にした
一方、城では
「っ…!馬で?」
秀吉は知らせを聞き
読んでいた書簡から目を上げた
「ほぅ、湖は馬に乗れたのか…どっちに向かったか解るか」
その場には、秀吉と光秀が
「恐らく森の方へ」
それを聞くと光秀は、眉をしかめ一瞬口を閉ざした
「光秀…?」
「…問題は無いと思うが…」
光秀はそのまま秀吉に背を向け歩き出した
「どこに行く?光秀」
「…俺の放っている斥候から不穏な話を耳にしている…噂だがな…念のため、様子を見てくる」
「っどんな噂だ?!」
光秀は顔だけ向けると
「…鬼と龍を見かけたって噂だ」
「っ?!…お前、なんで言わなかった」
「まだ噂で確信が取れてないからだ…」
向かおうとする秀吉を制すると、「お前は目立つ」といい光秀は外へと向かった
(良かった…やっぱり気のせいだったみたい)
しばらく馬を走らせて後ろを見るが、特に誰かがついてきている様子はなかった
なるべく開けた場所を走っていたが、ここからは森を越えた方が早いと判断した
「…秀吉さんのお使いもあるし、これ以上遅くなったら約束の時間に遅れるし…大丈夫だよね」
馬を森へ向けると、なるべく急ごうと早く走らせる
すると、入ってすぐに何か恐ろしいうめき声が聞こえ馬が脅えだした
「っ、大丈夫…っ!急ごう」
湖も怖くなって少し焦っていた
前方の小さな崖を見過ごしてしまい
「っ…あ…」
気づいた時には、馬から身を乗り出してしまっていた
(っ…!!)
頭を押さえ身を守ろうとした際、鈴の鳴き声がはっきり聞こえた