第24章 桜の咲く頃

目を細め冷静に見つめる信玄と謙信、そして言葉を詰まらせる幸村に、目も口も開いたままになった兼続
白粉は、話がしやすいようにと人の姿にすぐに戻って見せた

「湖が起きる前に、話し終えたいのでな。先を話すぞ」

未だ驚きを隠さない二人に視線を向け、先を話始めた白粉は…
安土城での出来事、そこから湖を連れ出した方法
そして、佐助に会って登竜桜までたどり着いた経緯を簡単に話した

「俺が、白粉さんを見たのはその連れ出した直後だったって事です」
「…なぜ、安土の武将達に説明しないで連れ出した？」

信玄の言いたいことに、白粉はうすうす感づいた

「いくつか理由はある。私が人間を信用していないこともあるが、一番の理由は登竜桜様が越後の領地に居ることだ…彼らなら話せば、連れていってくれたとは思う。だが、湖の体を治すには時間がかかると解っていた…隠密に他国へ長期に滞在することは不可能。しかも、その場は…詳しくは言えんが、飯山城付近だ」
「…領地を奪う戦が始まること…そのせいで、湖の治療が遅れること…また、戦が始まればその登竜桜もどうなるか解らない…ということか」
「そうだ。私はすでに死んだ身。精神に残る力だけで、湖を連れ出したのは賭けに近いが…そうするより他無かったのだ」

信玄は白粉の話にため息をつく

「ずいぶん勝手だな」
「…そうだな。佐助に会わなければ、湖に恩を返すどころか、殺してしまっていた」
「…だが、いい女は運が強いもんだ」

信玄の口調が変わった

「あんた…」
それに、幸村も呆れたように息を付く

「…白粉さんから目的地を聞いた俺は、飯山城近くの登竜桜を目指しました。そして、そこで鬼の顔を持つ土地神に会いました」
「な…っ、土地神？！」

兼続の頭はもうパンク寸前だ
だが、必死に動揺を落ち着けようとしているのは見て解る

「その土地神に助けられたのか？」
「そうです。謙信様。ただ、白粉さんが思っていたとおり、簡単にはいかなかった」

そう言い、佐助は登竜桜から言われたことを説明し始める