第24章 桜の咲く頃
そんな佐助の言葉と表情をみて謙信は「命拾いしたな、佐助」とだけ答えて、その鋭い眼光を閉じた
「よし、この件はこれで収まったな。話の続きを聞かせろ」
タイムスリップに付いては一切口を挟んで来なかった信玄が、佐助に話を促す
「はい。俺は、この時代に来て4年…もうすぐ5年になります。湖さんは1年。俺と湖さんで大きく異なっているのは、湖さんは鈴と一緒にタイムスリップしてしまい、二人が一体化してしまったことです。今回の湖さんの体の不調はそこから来ていました」
「そこからは、私が話そう…」
女の声に、全員の視線が白粉に向く
いつの間に寝てしまったのか、湖は白粉の膝を枕にうずくまって寝ていた
「白粉さん、湖さんは」
「今日はずいぶん歩いたからな。疲れたんだろう」
ふふっと笑うと、湖の背中を軽く叩く
「…湖の周りに、あんたのような女はいなかったはずなんだがな」
信玄が、その様子を見ながら白粉に問う
「それはそうだ。私は女では無いからな」
「へ?!まさか、、、男でございますか??」
兼続の素っ頓狂な声が上がる
くくっと笑うと白粉は「性別で言うならば、女になるのであろうよ」と愉快そうにするのだ
「白粉さんは、猫です。信玄様」
「猫…だと?」
「はぁ??」
信玄と幸村の声が上がった
「な…猫娘が二人居るって事か?」
「それも違うな。私は、猫であり、一度命を落としお前達の言う神やあやかしの類いになった者だ。縁あって、湖には恩がある身。湖の体の異変に気づき、ずっと見守っていた者だ」
訳がわからないという幸村に、口が開いたままの兼続
そんな二人を見てか、白粉は湖を膝から下ろし畳に寝かせると「見せてやる」と言い姿を変えるのだ
すると、今までその場にいた女が消え、白い猫がその場に座っている
見事な白い毛並み、琥珀色の目、そして額には桜の文様がついている
『これが、元々の姿だ。「女」ではなかろう?』
「なるほど…」
「…面白い」