第24章 桜の咲く頃
「事の始まりを話すには、皆さんに黙っていた事を話すしかないので…」
そう前置きをすると、佐助と湖は今か五百年先の世からタイムスリップしてきたことから話始めた
「…とりあえず、この刀…突きつけるのをやめてもらえますか、謙信様」
佐助の首元には、謙信の刀がまっすぐ突きつけられていた
「却下だ」
謙信は、その佐助の言葉に眉も動かさずに答えたが…その刀はすぐに引かれる
なぜなら…
「にーたん、いじめないでっ!」
佐助の後ろで、女に抱えられたままの湖がそう叫んだからだ
「……」
スッと引かれる刀に、佐助は振り返って「湖さん、ナイス!」と親指を立てて湖に見せる
「タイムスリップのこと、秘密にしていたことは謝ります。謙信様が、俺の過去を聞きたがるようなこともなかたので、つい機会を逃しました」
「問題はそれだけではない」
謙信様は不機嫌そうに佐助くんを睨んだ
「先程の話では、お前はそのたいむすりっぷとやらの観測を続け、その現象が起こる日を探し湖と、戦の無い世へ行こうとしたのだろう」
「あぁ…そうゆうことか」
謙信の言葉に、信玄がにやりと口角を上げた
そして佐助も腑に落ちた顔で手を叩くのだ
「あー…なるほど。謙信様は、俺がいなくなることを心配して怒ってくださっていたんですね」
「心配などしていない。ただ、出ていくと言うなら謀反人として投獄する。もしくは斬る」
「あんたもいちいち面倒な人だな…」
「真田殿っ、殿のこれは家信思いが為の…っ」
幸村の小言を、兼続が止めるように声を出せば、その向かいでは佐助が感慨深いと頷きながら…
「…さすが、謙信様。発想が極端でしびれます。そういうことなら安心してください。俺は、この時代に残ります。もともと俺が五百年後に帰ろうとしていたのは、責任を持って湖さんを元の生活に送り戻してあげたかったからです」
「お前自身は戻るつもりが無かったと言うことか」
「乱世での生活は、毎日が刺激的で愉しいです。まだまだ探求したいこともたくさんあります。もちろん、最初は戻るつもりでワームホールを観測してましたけど・・・・謙信様達と一緒に過ごすうちに、離れがたくなりました」
佐助の口元がかすかに緩む
「俺もいつの間にか、春日山城の一員になってたんですね」