第24章 桜の咲く頃
ぽんぽんと、その小さな背中をあやすように叩く女は、まさに母そのものだ
「こ、これはっ、も、申し訳ありませぬっ!!」
泣き出した童にうろたえ、兼続が謝罪すれば
「兼続、人払いをし…なにか…童が喜ぶ物を持て…」
「は、はっ」
謙信の指示に、兼続は頭の整理もままならぬ状態で動き出す
(某…、何がにやら…とにかく人払いを…万一にでもあれが、湖様なら…湖様なら??困りまするっ!某の予定では、湖様は謙信様の側室に…っあんな童ではかなわないではないかっ!!)
整理できぬまま動くのだから、兼続の頭はさらに混乱と混沌の渦なのであった
人払いの済んだ部屋で、佐助はこの姿の経緯を報告した
そして、この一ヶ月
赤子の湖を連れては来られず、一ヶ月待って三歳になってから戻ってきた事も合わせて話した
「安土で聞いていた湖の不調の原因は、鈴との一体化で…それを助けようとしたのが、あの茶屋で見た白猫で…お前は、白猫を助けてその姿になったって事か?」
「幸村…最後だけ違う。けど、大方あってる」
幸村に突っ込みを入れる男児姿の佐助
「…待て。茶屋で白猫だと…?幸村、佐助、何の話だ…」
「あれ?謙信様、報告は…」
「あー、悪いな。止めたのは俺だ。確認が取れないままお前に伝えては暴走しそうだったのでな」
その話を謙信が聞き返せば、当然佐助は報告されているものと思っていた
すかさず、信玄が口を入れるまでは
「そうですね…確かに、謙信様が暴走すると止めるのにひどく苦労しそうです」
「貴様ら…」