第24章 桜の咲く頃
「私は…毒じゃない…?」
『毒なら、我が娘が寄るはずもなし』
そう言い白粉を見れば、白粉は答えるように湖の指先を舐めた
『澄んだ水ほど、周りの影響を受ける。色を落とせばその色に染まり、濁った水が混ざり合えば濁りも出る…お前は濁りを浄化しようともがいてるんだ」
「…もがく…」
『浅はかで、愚かで人らしい…だが、愛おしくもある。白粉が気を掛ける理由はわかった』
つーと、顎から頬を登竜桜の指が滑り上がる
『そして、鈴とやらも…そんなお前の心を心配し、だが同時に好きで一緒に刻を過ごしたい事も解った』
「…鈴が?」
つんと、額に指を当てると湖に微笑む
『お前も…鈴は心の拠所なのだろう…』
(拠所…そうだ、そうかも知れない…小さなあの子と私が同じ存在で居られる。私に取って鈴は、もう切り離せない存在…)
「はい」
佐助は黙って二人の会話を聞いていた
また白粉も同様
湖の側から離れず、成り行きを見守る
『一つ忠告する。お前と中の猫、このままの状態で体の調和を取ることはできる。だが、調和することで元に戻る事はできなくなるかもしれない』
「構いません。鈴は…本来は、私の猫ではありません。それでも、此処に来て二人で過ごした時は何より大切で…私は、もう…」
『戻るつもりはないのだな?』
「戻るつもりがない」これは、元の場所にという意味を指しているのだと佐助は気づいた
一瞬驚きの表情を見せるが、すぐにその目は冷静な物に変わる
なぜなら自分のそうだからだ
最初は戻るつもりで、ワームホールの観測を続けていた
だが、此処で時間を過ごすに連れもう現代に戻りたいという気持ちは薄らいで居たのだ
だから、湖の気持ちは理解できた
「佐助くん…ごめんね、私…」
「いや、いいんだ。俺も戻るつもりはなかったから」
「え…」
今度は、湖が驚きの表情を見せる