第24章 桜の咲く頃
湖が姿を消してから4日
佐助が白粉を見つけた翌日のこと
「湖の消息はまだつかめないのか」
「今のところはまだ情報はない」
「光秀、お前の事だ。少しは怪しい話を聞きつけているだろ?」
秀吉が光秀の胸元を掴む
その手をやんわりと外しながら、光秀は息を付いた
「それなりにな。だが、すべて外れている」
同じような背格好の娘と猫
怪しい情報はあれど、どれに使いを出してもあたらない
「っ…、くそ…何処に行ったんだ…」
湖がまだ此処に存在している事は、あの歌で理解した
おそらくではあるが、タイムスリップには巻き込まれてはいない
そう認識した彼らは、湖の捜索にあたっていた
だが、そもそも湖が自分で城から出られるとはあの状態からして到底考えられない
かといって、上杉が動いた気配はない
動く前にその退路を全て断ったのは信長と三成だ
(あの歌…あやつは城から出る…姿を消すことは理解して歌っていた)
それは自らの意志で城を出たということだ
「湖の事だ…何か事情があったのか、巻き込まれたのかだろうな」
「…話せばいいだろう…」
「俺にそれを言うのか?」
光秀は、小さなため息をこぼしながら秀吉にそう言った
「何が…忘れるな、だ」
秀吉からその言葉を聞くのは何度目になるだろう
同日、春日山城の一角で…
「佐助が戻って来てない…じゃあ、あのまま安土に向かったのか…?」
「おいおい、幸。話がわからないぞ、なにがあった?」
庭先で、工具を片手に信玄が幸村に問う
「んーーー…いや、俺もさっぱり…」
「なんだ、それは」
ははっと笑いながら、幸村のいる方向に歩いてくると
その縁側に「よいしょ」と、腰を掛けて座る信玄
「とにかく佐助とはぐれて帰ってきた訳か。幸もまだまだこどもだな」
「な…っ、違いますよ。佐助とはぐれたからって訳じゃねぇしっ」
「じゃあ、なんだ?」
「湖を…いや、鈴を見つけた…と思ったから」
茶を飲もうと湯飲みを持った手が止まる