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【イケメン戦国】私と猫と

第24章 桜の咲く頃


湖が姿を消してから、3日たった頃
ある峠の茶屋に猫が二匹現れた

「おや、ねずみかと思ったが…お前さんの子か?」

日陰を求めてか、長椅子の下に白猫が潜り込んだ
くわえていた煤色の子猫を日陰に置き一鳴きする
茶屋の主人は、優しそうな笑みを浮かべ皿に水を入れ白猫に差し出す

「なんも悪いものは入ってない。旅でもしてるのかい?ずいぶんとくたびれているな…少し休んでいくといい」

主人の言葉に片耳が反応を示す
白猫はしばらくすると、確認するように皿を舐め、その後すぐに子猫に水を飲ませようとしていた
様子を見ていた主人は首をかしげた

(あの子猫、ずいぶんと弱っているようだな…)

「おーい、茶、一杯くれるか?」
「あ、はいはい。お待たせいたしました」

猫を見ていれば、いつの間にか茶屋に二人の男が現れていた

「長椅子の下、なんかいるのか?」

客にそう言われ、主人は猫の親子の話を聞かせた

「へー。猫が旅ね」
「いえいえ、旅でもしてそうに疲れていたのでね。例えですよ」

朱色の着物の男性客と楽しそうに笑談する主人
その男の隣に座っていた緑色の着物の男が、そっと長椅子の下を見れば
そこには、母猫と思わしき片耳のない白猫と、煤色の子猫がいる

(…煤色一色…和猫にしては珍しい)

くるりと、白猫の尻尾が子猫の姿を隠すように動けば、一瞬だけ赤い組紐が見えた

(まさか…いや、鈴は子猫じゃない。大きさが違い過ぎる)

だが、それは確信に変わる

チリリリン

と、鈴の音がなったのだ

「…佐助。なんか、どっかの猫娘がつけてる鈴と同じ音がしなかったか?」
「幸村、まったく同意見だ」

その茶屋に居たのは春日山城から安土に向う途中の幸村と佐助だ

「子猫かな?さっき、ちらりと見た際に飾り紐をつけていたから」
「主人、その飾り紐…いや、いい。猫、見せてもらうな」

幸村と佐助が長椅子の下を覗けば、そこには猫の姿はもうない

「あ。あっちに…きっと驚いたんだろうな」

主人の声に峠の先をみれば、確かに白い猫が掛けていくのを見つけた

「幸村、ちょっと先に行く」
「あとから追いかける」

幸村が答え終わる前に佐助はその場から姿を消した

「…あれが、鈴だとしたら…噂の神隠しは「猫」か?」

幸村は、急ぎ主人に金を払うと二頭の馬を連れあとを追うのだった
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