第24章 桜の咲く頃
(あ…また、だ…)
ふわりと、桜の花びらが舞えば、じぶんの目の前は桜一色に染まる
その美しい光景に、目を奪われれば…
にゃぉん
と、自分の足下に猫が寄り添うのだ
(鈴じゃない…この猫は…)
『白粉…』
足下を見れば、そこに居るのは真っ白な猫だ
『ようやくこちらを見たか、湖。ずいぶん、待った』
猫の鳴き声の代わりに、聞こえたのは懐かしい白粉の声だ
(どうして…白粉は死んでしまったのに…)
『…湖、色々聞きたいことはあるだろうが…お前は、早々に行かなくてはいけない場所がある。私と共に来い』
『…それは、この体のこと…?』
白粉の目がわずかに開く
『お前は、気づいていたのか…?』
『なんとなく…なんとなく、そう思っただけ…うん。解った…白粉についていく…』
足下の白粉を抱き上げようとしゃがめば、『良い子だね』と湖の指先をなめる白粉
『…時間が無い。すぐに行く』
『…うん』
みゃぁ…
湖の耳に、鈴の鳴き声が届いた