第24章 桜の咲く頃
「うん。だけど元気だよー、少しだけ体が怠いくらい」
はじめは、心配掛けたくないと「大丈夫」とばかり言っていた湖だったが、長引く体調不良にかえってその返答では心配を掛けると気づいた
そのため、この頃は自分の体調をしっかり伝えるように心がけていた
「…よし。なら、息抜きに馬に乗せてやるか」
そう言い、湖を抱えて立ち上がる政宗に湖は慌てた
「ちょ、ちょっと待って。政宗、帰ってきたばかりでしょ?信長様のところに行かなくて…」
「秀吉が行ってるからな。問題はない…外に出たいんだろ?」
先ほど言った事を思い出し、湖は気まずそうに頷いた
「で、でも、やっぱり、問題あるよ!それに…心配掛けちゃうし…」
「ちゃんと着込んで行きなよ。政宗さん、短時間だけにしてくださいね」
足音と共にした声の主は、家康だ
「家康…いいの?」
「しばらく外に出てないでしょ。少しくらいなら問題ない…その代わり、帰ったらすぐに診察ね…」
「な?家康の許可も出たことだし、問題ないだろう」
「っ、ありがとう。政宗、家康」
政宗の着物をきゅうっと握り喜ぶ湖に、二人は苦笑した
にこにこと、うれしそうに抱えられたまま出かけていく湖
そんな二人の後ろ姿を見守るように立っていた家康の横に、いつの間にか光秀が立っていた
「ほぅ、今日は調子がいいのか?」
「別に…良くはないですよ、けど悪くもない…」
「…あれは、本当に風邪なのか?」
湖の体調に処方している薬は、滋養薬ばかりだった
熱が出れば、解熱剤も飲ませるが
目立った症状はないのだ
その症状にはじめに気づいたのは家康だった
女中達と、掃除をしている湖を見かけた際
時折長い息を吐いて休む姿を見かけるようになった
本人に聞けば、言いづらそうに「怠い」という言葉が出た
それからだ、ちょくちょく熱を出すようになったのは
だが熱だけだ
それだけなのだ
「…俺が聞きたいです」
「そうか…」