第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
「あのね…宗久さんの事があって、みんな私が出かけようとすると誰か彼かついて来てくれたでしょ?すごく嬉しかったんだけど…だから、三成くんへの贈り物が探せなくて。ごめんね、今日は用意できなかったの」
少し寂しそうな顔で湖がそう言うのだ
(確かに、贈り物を大切な人に贈るのだと湖様は仰ってましたね…でも、それなら…)
「湖様からは、ぷりんや氷提灯、それにけーきを頂きましたよ」
にこりと微笑むも、湖の表情は冴えない
「ちがうの…あれは、皆にで…三成くんは…特別だから…」
最初は言い淀むように、後に連れ頬を染め目を閉じて三成を「特別」だという湖
三成は、少し間を置いてそして自分の目の下が火照るのに気づく
それを隠すように片手を当てると、できるだけ丁寧に言葉を選んだ
「その…特別とは、どのような…」
「「特別」は「特別」だよ、だって三成くんだもの…私の…一番、たいせつな人だからっ」
「……」
(これは…まずいです…)
「三成くん?」
湖が三成の方を向けば、彼は顔を片手で覆っている
だが、その隙間から耳や頬が赤く染まっているのに気づくのだ
「……っ」
それを見た湖まで、真っ赤に染め上がる
まるで、二人とも南天の実にでもなったかのように
三成は、少しだけ息を吐くとその手を外し湖の頬に手を掛ける
「…とても、光栄です。湖様」
その笑みは、特別な物
いつもの天使のような笑みも素敵だが、今見せている笑みは、少し照れ隠しするような笑み
「っでも、用意出来ていないの…ごめんね」
「…それならば、私が指定させていただいてもよろしいですか?湖様の贈り物を」
「っ、うん。欲しい物があれば、あ・・でも、あんまり高価な物は…」
するっと、頬を撫でながら三成は微笑むのだ
「私が欲しい物は、この世で最も高価で素敵なものです」
「三成くん?」
「私の為だけに…歌を歌ってください」
「…うた?」
「ええ」
贈り物は歌がいいと三成は言った
「歌でいいの…?」
「はい」
(でも、歌が…贈り物になるの…?)
「湖様が、私だけの為に歌ってくれるなら、それはすばらしい贈り物です」