第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
相変わらず眉間の皺が外れない家康に、気まずそうに湖が答えれば、家康は「わかってるんだね」と小さく言う
「なら…」
「え…ここって…でも、もうさっき」
「その冷えた身体、もう一度あたためなおす」
着いた先は、先ほどまでいた湯殿
湖を抱えたまま入ってきた家康はその身体を降ろすと同時に、自分の着物を脱ぎ始める
「い、家康、ちょっとっ、待って…」
着物の隙間から見えるたくましい身体
湖はそれから目をそらすように顔を背け頬を染める
そんな湖にかまわず着物を脱ぎ、湖の前にくれば彼女は手で目を覆い「なになに??」と首まで染め上げるのだ
(…可愛い…)
くっと笑いがこめるが、湖には聞えないように耐えその羽織と寝衣を脱がせにかかる
そうすれば、湖も驚き手を外しわずかな抵抗をするものの
全く問題はない
簡単にその身からすべてを剥げば、再度湖を抱えて湯が張ってある風呂へ向かう
湖は、家康の腕の中で極力身体を隠すように縮め家康の名前を呼んでいた
ざぶっ…
「あっ…つ…」
「熱くない…そう感じるのは、あんたが素足で雪の上に乗ってるからだ…凍傷になるってあれだけ女中と秀吉さんに注意されたのに…懲りてないあんたが悪い」
「う…っ、なにも言えません…」
湖は、ちらりと家康を見る
そうすれば、彼の眉間の皺が無くなっているのに気づいた
(あ…もう怒ってない…かな…)
「言っとくけど、怒ってない事はないから」
「…っ、家康って…人の心の内が読めるの…?」
「あんたが顔に出やすいだけ」
「っ、ご、ごめんなさい…ええっと…忘れたわけではないの…でも、ちょっと…」
湖の右手が先ほどから堅く閉ざされたままなのに家康は気づいていた
そして、そこには何が握り閉められているのかも
ふっと口角を上げると、わざと理由を尋ねる
「何してたの」
「んと…歌ってた?」
「それで?」
「えっと…見てたの…」
「提灯を?」
「えっと…」
だんだんとしどろもどろになる湖に、内心笑い出しそうな家康
だが、なぜかをはっきりと言ってもらいたい
どうしてあんな所で自分の贈ったものを眺めていたのか