第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
(…確かに…宗久相手に命の危険は無いのはわかっていたはずなのに…)
湖の事となると、いちいち乱れる心の中
当初は煩わしいとさえ感じた
だが、一度受け入れてしまえば、もうそれは煩わしさでは無かった
常に側に…目の届く所に置いておきたいという束縛に近いものに変わっていく
(それが出来れば、どれだけ心が安まるか…)
だが、彼女が自由に行動する様が家康にはとてもまぶしく見え、自由を奪う事など出来ないでいる自分が居るのも自覚しているのだ
(ほんと…困った娘だ…)
歌い終わるのを壁にもたれ掛かり、目を瞑りながら聞いていれば…
「っくしゅん…」
と小さくくしゃみが聞える
目を開けた家康は改めてその姿を見れば…
「…っ、ばか湖…」
立ち上がった湖の足もと、素足なのだ
酒の回らない頭であれば直ぐに気づいたはずだ
ここが、湯殿から部屋までの通路であることに
湖は、湯殿から出た後
ふらっと氷の提灯につられ庭に降りたんだと今気づく
真っ赤になった足
くしゃみ
なのにも関わらず、提灯から灯る光りに何かを当てて笑っているのだ
その手元には…家康が贈った帯留めが見えた
その場から湖の居る庭に降りれば、乱暴に降りたせいか…その音に気づき湖が振り返った
「あ…家康」
すごく嬉しそうなその笑顔に思わず微笑み返したくなるが、眉間の皺は外れない
そのまま近づくと、有無を言わさず抱き上げ廊下に上がり歩き出す
「え、え…ちょっと、家康っ、どうしたの!?」
「…どうしたも何も…それは、あんたに聞きたい…」
じろりと小さく睨めば、「なんで?」と理解していない表情を見せる湖にため息が漏れる
「あんた…湯上がりで…しかも、素足で庭に降りる女の子を…あんたなら、どう思う?」
すると、はっとした顔をし、次に見せるのは「しまった」という表情
(ほんと、くるくるとよく顔に出る…可愛いけど、今はそうじゃなくて…)
「えっと…風邪引いちゃうよって…思うかなぁ…」