第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
湯上がりなのか、綿羽織りを羽織ったまあるい背中
それは、小雪がちらつく庭にあった
まだ小さく灯る氷の提灯を眺めるように屈んで歌う湖の姿
目を細めて様子を見ていた家康
その脳裏に、先日の事が過ぎり始める
それは…
顔を青ざめ小さく麻痺する湖の姿
(…あれは…駄目かと思った…)
あの解毒剤が無ければ、この歌声は聞こえていなかったかもしれない
あとから聞けば、解毒薬を見つけたのは信長だった
今、あそこで歌っている姿は、あれがあったから助かった命だ
そうゆう意味では、あの大山に少なからず感謝する
解毒薬を作っていた行為に関しては
(くそ…)
以前、崖から湖が落ちたとき…自分が逃がしたつもりだったのに、結果的には一人にし危険な目に遭わせてしまった
その記憶は、湖の額の傷になって消えることがない
今回は、あのいかれた商人だった
人目に触れず攫われ、刀傷に毒まで犯された身体で運び込まれてきた
自分が想定していた中で最も最悪な状況ではないが、それに一歩足を踏み入れた状態で渡された湖
確かではない解毒薬に頼るしか無かった
あれ以降、どんなに珍しい薬草もぬかりなく集めるようになった
(もう自分の知らない所で、目に入らない所で湖が傷ついて帰ってくるのはごめんだ…)
あの二件の出来事で、家康の意志がさらに強固なものへと変わった
だから、宗久の一件をたまたま三成、秀吉と居合わせた場で聞いたときに直ぐに城を飛び出した
三成も一緒にだが…
駆けつけた先は、宗久の女遊び専用の邸だ
あり得ないと思ったが、草履を脱ぐこともせずに家に上がり込み宗久を押さえつけた
その二人から少し遅れて到着した秀吉は、しっかりと場を想定し湖の着物を持参していたのだ
その秀吉から三成と共に説教を受けた
らしくない行動をするな、現状整理してから行動しろと…