第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
■ 「聖夜の夜に : 家康編」 ■
家康はお開きになった宴のあと、信長に呼び止められさらに二人で酒を飲んだ
いや、飲まされた
ここ数日ずっと同じだ
(何が…お前は残れだ…)
少しだけ心許ない歩き方をしているが、家臣や女中が通り掛かればいつもと変わらない様子を見せる家康
(赤紫の葡萄の香り…つい香りに誘われて一口飲んだら…この様だ)
ワインを出され飲めば、先に飲んでいた酒との相性か酷く酔いが回ってくるようだった
(あの人は、普通にしてたけど…俺はもう、あの酒は要らない…)
この数日間、仕事を終え御殿に戻ろうとすれば必ず信長がタイミングよく現れ、様々な異国の酒を飲ませるのだ
(もう付き合わない…光秀さんの外出が増えると、その尻ぬぐいで酒に付き合わされる…あの二人は酒が水なんじゃないの…)
はぁ、とため息を零せば何かが耳に入ってくるのだ
「…?」
はっきりしないが、何かが聞える
家康は重たい足を動かしてそちらに向かった
本来なら、まっすぐ御殿に戻るところだが…
聞えるものの方向に向かえば、だんだんとはっきりしてくるそれに眉間の皺が寄ってくる
「…あの娘(こ)は・・」
それが、湖の歌声だからだ
(どこから…)
部屋からなら、こんな所まで声は聞えない
一曲終われば、少し間を置いて今度は異国の言葉が聞えてくる
I'm dreaming of a white Christmas…
聞き取れない言葉の羅列
だが、この酔った頭に響く流れるような歌は心地がいい
声の方へ足を向ければ、その姿はすぐに捕らえることが出来た
冷たい壁にもたれ、体の中の熱を冷やしながら歌声に耳を済ます
(…甘い…声まで甘い)